最終更新日:1998-7-30
[解説]
オリエントに書いたエッセイの続編です。今回は写真はありません。
こんどはねずみです(うげー)。
[本文]
土曜は夜更かしをして、さて寝ようかと布団にもぐった所、エドナか、畳の上でチュチュといった声がする。何か吐いてるのかな、と思った。猫は、身体を舐める時一緒に呑込んだ毛を胃の中で毛玉にして、ことある毎に吐出すのです。布団から起きて、足下のほうをみると、10cm程の黒いものが‥‥。
出た、ねずみ。まいったなあ、いるのかねえ、しかし。家の中にいたのを捕まえたのか、外から連れてきたのか、エドナの動向に記憶が無い。ねずみは、ほんとにチュウチュウないている。エドナは50cmくらい離れた場所でゆうゆうと動きを見守っていて、ねずみは既に弱っているらしくのそのそとしか動かないが、それを前足で弄ったり、食わえて移動したり。可愛いとは思わないが、印象的な目をしている。
まいったな、よりによって、獲物の本命じゃないか。好きじゃないなあ。ちゃんと殺しておけよ。おれは寝るからな。などと思ったものの、いやいやこんな状況で眠れるはずないじゃないか。目覚めたら、枕元にねずみの死骸がコンニチハなんて、いやだよ汚い。これはどうにかしないといけない。食わえて、書斎(隣の三畳間だけど)のほうにでも連れてって、そのまま逃がしたり、またはミイラにでもされたりしてもたまったもんじゃない。
覚悟を決めて、おっかなびっくりスーパーのポリ袋を被せようとしたら、さすがにねずみ、逃げる。しかたなく、その辺にあったイモリ捨て用の割箸で挟んた。むにゅっと、柔らかい。ねずみが小さめだったのは、救われた。左程、怖くなかった。
この、いわゆる袋のねずみを、さてどうしたものか。そのまま逃がしてあげても、またエドナが連れて来る可能性がある。棄てるにしくはなし。そもそもねずみってのは汚いから、殺したほうがいいなと思い、袋の口を再び明けて、蛇口をひねった。げ、白いポリ袋の中で、もがきおよいでいるのが写っている。初めて、かわいそうだなと思う。一分ちょっとで、動かなくなった。袋の底にエドナ用先割れスプーンで小さい穴をあけて水を捨て、少しなかをのぞくと、いわゆる濡れねずみは、随分小さくなっている。けものは濡れると、小さくなるのだ。ひとつ向こうのゴミ捨て場に捨ててきた。
東京にもねずみはいる。しかしそれは普段おもてにあらわれず、都会の暗部に棲む。闇に追込まれた自然を、いちばん身近な自然、あるいは半分虚構化された自然である猫が連れてくるのである。
遊び道具が消えて、エドナはきょとんとしていた。