漂流教室 日次(ひなみ) |
とりあえず、三週間弱の間の出来事だ、ということに驚いてもらえれば、まずは結構です。
数字は、順にSSC、SVC、SB各版の巻-頁です。
未来カーを買わず、母に腕時計を買う。校庭に行き遅くまでユウちゃんと遊ぶ。
朝、母とケンカする。大地震。体育館に集る。川田たけし死ぬ。関谷凶暴化を鎮静する。ユウちゃん学校の門標を持っている。給食を食べて机で寝る。
ユウちゃんの三輪車で目が覚める。862人の墓標を発見する。皆既日蝕。若原狂い先生達を殺す。外へ探検に出る、途中西あゆみを拾う。母のエピソード。ホテルケイヨーで若原先生からのがれる。帰校、辰巳くん磔、プールの水を見つける。体育館にあつまり我猛くん登場。その夜、一枚の木の葉を持って長田くん帰り死ぬ。
関谷ラーメン復活。探検隊出発、怪虫出現。女番長登場。低学年たち鳥になって、選挙。高松が総理大臣になり、大和小学校国誕生。大臣を任命する。仲田大食い。
「けれども次の日も、その次の日も怪虫は姿をあらわさなかった。」
この「その次の日」も怪虫が出なかったのか、「その次の日」には結局怪虫が出たのか、ちょっと分かりづらい。ここでは、「その次の日」に結局怪虫が現れた、と考えておきたい。
「その次の日」。怪虫出現。池垣くん死ぬ。復讐戦に行き仲田を殺すマネ。小怪虫出現、仲田自殺する。「ただいま」が合い言葉になる。
この「ただいま」をめぐる数ページ(5-33,34、2-334,335、3-118,119)は、なんだか数日間経っているような間延びした時間の流れがあるが、そうではないだろう。
橋本くんプールに落ちる。橋本ペスト発症。感染の疑いのある翔たち校外へ、ミイラ発見。そこで夜明し。
ペスト戦争。母と大木選手。ミイラからストレプトマイシン出す。
翌朝ペスト治る。リス殺す。水の探検。雨乞い、山つなみで咲っぺ頑張る。自転車発電で電灯が点く。
未来きのこ。関谷復活し、大月くんに未来きのこを食べさせる。夜、大月くんがくる。
大月くん登場後に、「その夜はとうとう朝までみんなねむることができませんでした……」(SB 4-261)とあるが、その後に「さっきのは、もしや大月くんでは?」とのセリフもあり、10日目の夜の出来事と理解する。
早朝から井戸掘り。美川さん変化。夜、美川さん去る。高松追込まれる。地震が来て一時助かる。
井戸掘り。地下鉄、未来人類。未来ヒトデ。関谷は自動車で逃げる。食料無く、大友くんと分れる。母に手紙を書き始める。
大友と戦争始る。盲腸の手術。女番長帰る。
4日間眠り続けた〔5日めの朝に目が覚めた、と考えておく〕。未来生物。黒いスモッグ。学校脱出。昼も夜もあるきつづけた。
「昼も夜もあるきつづけた」は、一昼夜という意味だろう。次の日には学校に帰るが、やはり一昼夜の距離である。なお、「天国」の場所は別に「富士市(静岡県)」である必要はない(東京からでも富士山は見える)が、富士山がかなり近くに見える場所だからやはりかなり静岡に近いはず。だから一昼夜で行来するのは実際はちょっと無理だろう。
(彼らはこの日寝ていない)。天国に付く。大友側、人肉を食う。コンピュータの未来紹介。偽りの告白をし、西さんを連れて脱出、夜になる。
朝になり学校へ急ぐ。学校につく。大友くんの告白で蘇った友情。現代へ戻ろうとするが失敗。咲っぺ逃げる、大友くんおいかけて行き、生返りつつある未来を発見する。人工衛星来る。ユウちゃんだけ戻る。現代の高松夫婦、翔たちの幻影を見る。
[まとめ]
事件と事件の間に、無駄な時間がなくて、ほぼみな事件が連続して起っている。すべて、「次の日に、またその次の日に」という形で、毎日が事件の連続である。参考までに記すと、こうした毎日の構造を持つ楳図長編作品には他に『洗礼』や『アゲイン』がある(表紙の画像)。
『洗礼』こうした日次を作ってみると、面白いはずです。
『アゲイン』について、次のような発言が有ります(『少年サンデー』1971年42号)。
「楳図先生より/はやいもので、あっという間に一年がたってしまいました。元太郎が若返って、まだ4日めだというのに、何かふしぎな感じがします。自分の作品 かなり毛色の変ったものになると思います。バカバカしさと、元太郎のひたむきな生き方とが、うまくでればと念じています。前にもましてご愛読を!!」
そもそも食料がないのだから、あんまり長い期間を設定は出来ないという構成上の理由もあるだろう。
ちょっと分かりにくいところが、怪虫が現れなかった二日間と、翔が手術で寝ていた四日間。しかし、いずれにしても、17日〜19日間くらいの出来事であることがわかる。
たった3週間弱の出来事であることに、案外驚いてもらえると思うが、決してソープオペラ式な「詰込みすぎ」「一人の人生に次から次へと思い付くかぎりの事件が起きる」ではないと思う。例えば、無時間的なマンガの代表「サザエさん」や「ドラえもん」などでは、永遠にカツオやのび太は進級しないが、あれらの多くのエピソードと時間を一年間に詰込むには無理が有ると思う(実際、夏休みに毎回冒険に行っていたり等)。これらの時間性は、リアルな時間意識とは別の問題として考える必要がある。比較して、『漂流教室』の時間は、リアルな時間と言って差し支えないと思う。一番込合っているのが6日目(大怪虫、小怪虫、ペスト発生、ミイラ)だが、午前、お昼、午後、夜、くらいで配分可能だろうし、リアルな肉体的に込合っているのが16〜17日目の天国に行く行進だが(彼らは一睡もしていない)、これも非常事態の出来事考えれば、了解されなくもなかろう。ほかに、盲腸の手術は、場所を見つけるのが一番大変であり、切るのは5分もかからないそうですから、スズラン・リレーともシンクロ(共時的経過)している。問題は、咲っぺが手紙を書くだけの時間があったのかどうか、くらいかな。
季節は何時か? こいのぼりが見える(1-29)。「7/25出張」と黒板にある。(1-135頁)など、一定していない。このあたりは、作者として明確な意図は持ってないと見るべきで、「季節は何時か?」と深読みしてみてもあまり意味がない、と判断すべき。でもまあ、6年生になったばっかりという雰囲気だろうとは思われる。