稀覯地獄 |
| ||
(書影) | (カラー口絵) |
好評、肉子ちゃん!第2弾!
個人的には、肉子ちゃんシリーズの中で、第3話「エステ館」が最も好きで、初出時はちょうどこのhpを作り始めた頃だったこともあり、今後、この肉子シリーズがどうなっていくのか、完全に読み切り作品なのか、微妙な連続性があるのか、あまりよく分かってなくて、「あの、不気味なカニは、次回どうなるのかー」と、軽い恐怖を覚えたのでした。ま、次回は出てこなかったので、「あー、毎回完全に世界が別なのね」とやっと分かりましたが、今回久しぶりに読んで、あの時の微妙な不安を再確認した次第。エステ館の女主人(似顔、キョーレツすぎ!)や、ほか音楽プロデューサー等、当時流行の有名人なども取り上げた作品は、ともかく実に嫌味で過激で歯切れがよく、今読んでも懐かしさもありつつ愉快です。
第4話は、今回初めて読んだ。これも名作ですね。
造本の凝り方は1の路線をより過激になっているというか。寒色系の表紙も、個人的に好きです。また、見返しの「かるた」が非常によい、上手い。これ、実際、いろはで全部作っても、売れますよ、買いますよ。
| ||
(書影) | (カラー口絵) |
出ました!やっと単行本化されました、待望の『肉子ちゃん』!! 児嶋唯一のキャラクター主義作品。登場の一声、「肉子じゃないもん! 似久子だもん!」(こういう、意味のないセリフ、だーいすき)から始って、無邪気で無垢で健気さの超絶インパクト乙女が大活躍する。教訓的にいうならば、絶対的な善意の模索。平和主義者・児嶋都の理想のひとつのあり方だろう(と、勝手に言っておく)。しかし、肉子ちゃん、キャラ的には、やっぱり濃いですな(笑い)。
今回の単行本は、造本もめちゃめちゃこっている。表紙カバー、カバー袖の作者紹介、見返紙の「肉子ちゃんダイエットすごろく」、コラム風な肉子ちゃんレシピ(庭石丸呑みとかチョークの粉のピザとか。よい子はいじめに使わないでね)、巻末の読者のページ、広告、PRやら、雑誌風というか貸本風のごちゃごちゃした感じ、かつ全編に流れる乙女ちっく少女漫画のテイスト満載。
おっと、内容的には、都市伝説や楳図作品をフィーチャーしたホラー(グロ・ポップだが)です。なお、発行社のマガジン・ファイブは、ソフトマジックの別会社。
全5話所収。尤も、これで肉子シリーズ全作品が読める、というわけでもまだ無い。続編も早速期待したい。
|
|
||
(書影) | (カラー口絵) |
作品集てきには、「ザッツ・ザ・ミヤコ・コジマ!」ていうか、もうほんとに(いつも、おんなじ言い回ししかできなくて、恐縮ですが)、
作品てきには、僕は「マンドラゴラ」が好きで、この系列の作品を並べれば、初読の人も「ふーむ。上手いマンガ家じゃないか!」って、ふつうに理解してくれると思うが、そんな生易しい一冊ではないのです。
巻末のインタビューは、児嶋都の幼少時代からていねいに追って、鋭く迫っていて良い。「怪奇漫画家の血」ということばに触れて、こんなくだりが有るのだが、
児嶋 ……「血」っていうとかっこいいけど、簡単に言えば「天然」ってことかな(笑)。
吉田 「天然」ってすぐれた表現者の基本要素のひとつですよね。
児嶋都は、視点が違う。常識とかフツーとかからの視点ではない。しかも、それが素直に違う。そのために、女子中学生(=おとめ)を題材にして、結果、たとえ教訓的なオチがついている作品でも、後味の良い読後感だけではない、なんかザラザラした舌触りが残り、はたまた反道徳的なオチだったりする場合には、もう、ちょっとえぐられたようないやーな感じに思うのである。それは、見た目スプラッターないやーな感じではなく、人があんまり見たくない、隠しておきたいような心理だったりしますね。
などと思うのだが、しかし、こういう簡単な一口批評が成立しないほど、中味が複雑で、抽象化できない作品群なのである。
とまあ、いろいろ言ってますが、立ち読みの人は、まず「怪談マンドラゴラ」だけでも読んだほうがいいです。
それから、「人魚姫」のうまさ、「うしろ地獄」のブラックなストーリー、「肉子ちゃん」の教訓的な救い、「コックリさん」のネーミング、などなどを、楽しむ。作品それぞれに振り回されます。
そして最後は、「絵本怪談〜女の花道」をしみじみ味わってみましょう。この作品は、チャンプルー風、多重奏的な児嶋テイストが、極めてすっきりした形で表現された作品。
しかしもちろん、プロは、本の掲載順に読みます。
帯には、編集子・吉田クンが書いたのであろう、気の利いたセリフが咲き乱れてますし(「大解剖」が笑える)、また高橋葉介の推薦フレーズが目を引くしかけになっとります。
|
||
(書影) | (カラー口絵) |
帯の推薦文に、綾辻行人、唐沢俊一、花輪和一。解説は私・高橋半魚(はずかしー)です。描き下ろしの表紙も良いが、扉(左図)も素晴らしい!目玉の天使もすてきやね〜。
解説についての言い訳若干。1、肩書きの「国文学者」ってのは一回使ってみたかったのですが、活字になるとものすごーくはずかしいですね〜。2、「受験生は暗記しよう」とかいうフレーズが出てくるが、もちろんギャグです。3、その他、内容については言い訳しません(笑い)。
原作:綾辻行人(解説1頁あり) 作画:児嶋都 帯に伊藤潤二が推薦文を書いている。
|
|
|
|
なお、台湾版があります(右の書影)。刊年は「87年11月」、勿論中華民国レキね。
学園ギャグもの、連載作品。
|
余談。私と、児嶋作品の出会い。
たしか、つらーく、気のおもーい用事で、京都に行こうとしてた時だったと思う。駅でふと、今日はなんにも本を持ってない事に気付いて、キヨスクをながめた。キヨスクってのは、ろくな本がないのが相場だが、なんか無いと電車の中で間が持たないと思って、10分以上物色して随分迷ったあげく「まあ、こんなもんだろう」と思って取り上げたのが「おとな地獄」だった。児嶋先生のことも知らなかった。
一読して、「いやーなマンガ家を知っちゃったなあ」と思いましたよ(笑)。あと味が実に悪い。ストーリーは、実に練ってあるにも関わらず、そして絵も悪くないのだが、なんかどことなくナゲヤリなのである。単純に「救いようが無いストーリー」とかではない。あえて言葉をさがせば、
それに「地獄」というのがテーマになってるのも、案外新鮮でよかった。最近の諸作品は、本格ホラーでないこともあって、地獄モノはなくなりつつあるようですが。
そんでもって、随所に楳図かずおのパロディ的な影響が見て取れる。「あー、この人、楳図が好きなんだなあ」と思った。
尤も、絵柄は楳図に似てる、とはあんまり思いませんでした。いまでもそれは、実はあんまり思わない。特に『おとな地獄』は、ころころ絵柄が変っている。楳図よりは、美しい描線は初期のひさうちみちお以来だね、と思ったくらい(「少年アリス」など)。
で、本題。楳図については、モチーフのパロディもあるが、それはさて置いて、
ただ、ついでにいうと、楳図は基本的にテンションが高いが、児嶋はどっちかというと低いと思う。零度のピクチュール(笑)。たとえ、ページをめくったら、目玉びょろーん、脳味噌ぐちゃーん、でも。
「ほんとに楳図が好きな人って、あんまりいないよなあ」と、つねづね思ってた独り善がりな僕は(笑い)、しかしここに作者の楳図への敬愛の情を見ました。そしてその後、がっちり書込まれているにも関わらず、このナゲヤリな作家が、実に気になったのでした。その後、本屋さんで「児嶋都」の名前を探すように心掛けていたが、なかなか逢えなくて、悲しい思いをしてました。
因みに言えば、キヨスクでは日野日出志や犬木加奈子も並んでたはずです。それらはパスしました。はっはっは、おれってセンス良いぃ。
追記(2000-03-17)
テンション低い、と書きましたが、ちょっと言葉が違うなあ。最近(いや、さっき)思うには、にじみ出るおおらかさがあるのだなあ。これは、肉子ちゃんを見てるから思うのかなあ。