文学I
301教室……2025
福永武彦『草の花』を読む
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*内容は更新されています。授業開始前にリロード(↻再読み込み)してください。
しかし分断の時代 ↭(階級、人種、性差。=文化的、経済的、政治的)である。貧困、戦争や虐殺☠
「芸術」の意味。限界?無力感?J・P・サルトル「飢えた子どもの前で小説は無力か?」1964年頃
‖し膳歃僉癖質性)/言語芸術における物質性(?)
芸術ART(artificial人為)と自然(環境問題)
→新たな二つの限界。どちらも、物質の問題としてある。物質関係としての経済。
近代小説を一作品、丹念に読んでみる。福永武彦『草の花』1954年 シラバス/サイト
ちな去年まで福永武彦『忘却の河』1964年を読んできましたサイト
かゆう堂でも売っています。590円。前置きは不要、早速読んでみましょう。全4章(シラバス再掲)
1回 冬(1)詩人のサナトリウム 2回 冬(2)病室の前提、進行、日常 3回 冬(3)肺葉摘出と二冊のノオト 4回 第一の手帳(1)内海ー伊豆H村 5回 第一の手帳(2)フィジックな要素 6回 第一の手帳(3)オリオンの滴り 7回 第一の手帳(4)舟の月明、岬の瞳 8回 第二の手帳(1)春のショパン 9回 第二の手帳(2)孤独な信仰 10回 第二の手帳(3)戦争と草稿 11回 第二の手帳(4)火山ー信州O村 12回 第二の手帳(5)召集令状 13回 春(1)私と汐見茂思 14回 春(2)或る永遠なもの 15回 二〇世紀文学について
じっくり読みましょう。でも、ある程度の速度で、飛ばしながらでも大丈夫です。レポートも書いてもらいますから、最後(八月ころ)には何度も読み返すはずです。面白い作品です。ダカラ、ダイジェストやあらすじのみ、早送り再生はオススメしません。(人生早送り?)
ゆっくり読むほうが、難しいのです。技術(や慣れ、習熟)が必要です。
2025-04-14 (Mon) 旧新版13頁2行目まで読了。 百日紅、霊安室。対比される生と死のモチーフ。死の中の生(冬の百日紅)、生活に隣合せの死(霊安室) 枝枝、木木、部屋部屋、寒々、黙々まで繰り返し言葉が気になってしまう。
グーグルクラスルームをつかいます(クラスコード tun3k7t7)。出席代わりに、毎回感想を書いて提出してください。授業メモを、最後のレポート作成に役立てる。
(承前)百日紅と霊安室/生と死をめぐる、対比
汐見茂思を語る。「私は自分について語るためにこの稿を起こしたのではない」。「精神の剛毅」。巧みに構造化された構成。
サナトリウムでの前提。生活、治療、心情。超然たる汐見。エピソード、言動。評価。
サナトリウムでの進行。肺葉摘出術を希望する、10時間以上におよぶ手術、術中死。
サナトリウムでの日常 。小さなエピソードからなる、変わり映えのしない平凡で退屈な、死に直結した日常。
エピソードから出来事へ「小説のようなもの」。運命とは、未来が定まっているという意味ではなく、人生に重要な意味を与える偶然である(九鬼周造による定義)。「運命が定めた偶然のほうへ。あるいは彼女の死のほうへ」『海市』の最後のことば。(運命と偶然、逆だったかなあ?)
(1)百日紅と霊安室
(2)汐見茂思1大部屋の仲間として
(3)汐見茂思2出会い、孤独を抱えて
(4)汐見茂思3ノオトに書き付けている、良ちゃんとのやりとり、肺葉摘出を希望している
(5)汐見茂思4冬が過ぎ、年末年始に汐見のBサナでの噂を聞く、肺葉摘出が二月に決まる
(6)汐見茂思5手術の前日 ノオトの話
(7)汐見茂思6手術の当日(朝)セラフィックな夢、記憶
(8)汐見茂思7手術の当日(昼から)順調に進むかに見えたが、術中死。
(9)汐見茂思8手術の当日(深夜)大部屋に帰って汐見の死を告げる。
(10)汐見茂思9手術の翌日 快晴、ノオトを読みふける
小さな可分割なピース(部分、断片)によって全体(「冬」章)が出来ている。20世紀小説の特徴:断片で描く(可分割な全体)。意識を描く(心理でなく)。方法化された時間(出来事でなく)。
やはり、「冬」は3回かけてやり、さらに、3回目で「第一の手帳」の冒頭から、伊豆くらいに入るほうが自然ですね。リンクをすでに書き換えてしまいました。
(1)語り手:夢の夢から記憶の定着へ
(2)ポンポン−船中、船着き場
(3)大学寮まで雑談しながら、プラトーン
(4)語り手:H村の春
(5)午前。矢代(達磨峠越え)、春日先輩(弓−僕の心は此所にはない)
(6)藤木に達磨峠越えを誘う、藤木の家(大田区大森)
(7)午後1。藤木、部活やめるってか(柳井)
(8)午後2。藤木と話したい。ノルマルラーゲ。
(9)夜。2年生の相談会。フィジックな要素。
(10)矢代。
(11)村祭りの日。大学生の春日さんと峠越えをする。
(12)その晩。藤木と話す。魂の再生。「何にもならないのに」
(13)語り手:生と死と。オルフェウス。
(14)語り手:葬式。オリオンの滴り
(15)月明下の海上−奇跡
(16)天使は跳び去ってしまっていた
(17)電報があって、一足先に帰る藤木
(18)「春雨や小磯の小貝濡るるほど」岬の瞳
さらに進めば、景色の表現、意識の変化、それら映像的な表現の巧みさ、など。
2年生 7人:汐見、立花(寮の同室、頼り切りだが煙たい)、柳井繁雄(弓術部キャプテン)、木下(会計係)、服部(二人ともプラトン的少年愛に冷ややか)、宮沢、中川(合宿に遅れて参加)
汐見の藤木への思い、態度。同級生や先輩らの親切によって、汐見の主観的な思いが、バランスよく平均化されていく。「プラトーン的な少年愛」、「無性、両性、同性へ。さらに異性愛(正常?)へ。
今日的な平均化「ブロマンス」についても、厳密な定義が不可欠。なお、現在の瞬間的な基準から、過去から未来へ続く様々な事象を判断するのは危険。たとえば、恋愛、正義、戦争、独裁とか。AIとかITとかスマホ的コミュニケーションを確定的な基準で考えてはいけない。それを出発点とするのは仕方ないが、それを相対化し、事象の個別性にたどりつく必要がある。もちろん汐見の個別性も、汐見の時代的制限のうちにある(東海道線で東京駅から熱海まで行く等)。その相対化能力が、勉強するということです。
(11)段落目、春日先輩を峠越えで見送るあたりまで読みたいと思います。
今日はここまでいけるかな。藤木!ショック!
秋月のコンパの前日、藤木と話す。「何にもならないのに」と言う藤木。そして、オリオン座と夜光虫。
案外、予定通りに進んでいますね。読み終えた人もいるようですが、今日で第一の手帳が終わります。
このタイトルが良いでしょう。
第一の手帳の復習として、グーグルマップを見てみます。
また、文章や感想をまとめる練習として、6月27日くらいを締切りに、中間レポートを課します。めんどくさくてごめんなさい。文章は楽しく書けば良い。(点数化に抗して!)
第二の手帳は全部で9段落ですね。
第二の手帳の段落
崙L收藥淹辧祝佑青春において愛したのはこの少女だった」
◆嵋佑楼汰潅和咾両紊如
「公会堂の石段を降りきると」
ぁ嵋佑呂△泙蟠佇戮紛个畤佑任△襪箸聾世┐覆った」
ァ屬昼までには戻ってくる筈ですのよ」
Α嵋佑肋説を書き始めた」
А峅討隆屐⊂そ犬詫茲覆った」
─崋,瞭の午後、僕と千枝子とは」
「その年の十二月の下旬に、僕に召集令状が来た」
「演奏が始る時間になっても、僕の隣の席はまだ」
汐見は千枝子と、キリスト教に関して論争する。信仰と孤独とは両立するのか。
無教会主義:内村鑑三に由来する、日本独自のインテリ層に影響を与えたキリスト教運動。東大総長を務めた二人、南原繁、矢内原忠雄(矢内原伊作の父)など代表的な指導者。
20世紀小説の特徴:
高橋明彦「忘却の河石の覆流 −福永武彦二十世紀小説私注」『金沢美術工芸大学紀要』66号2022年3月
歴史:1920年代。(フランス)M・プルースト『失われた時を求めて』、(イギリス)J・ジョイス『ユリシーズ』
三つの特徴:^媼韻領れを描く(内的独白)。∧法化された時間(往還可能な断片群としての現在・過去・未来)。C琶劼箸靴討寮こΑ憤媼院∋間を含む世界の断片化)
『忘却の河』はそうした明確な意識と方法論をもって描かれた作品(1964年)。『草の花』は未だそれ以前、夏目漱石『こころ』などの影響(方法論)が残っているかんじである。その完成体か。
マルクシズム:戦前の思想関係(今とあまり変らない、全く変らない戦争の世の中)。三派鼎立、自由主義(リベラリズム)、社会主義(マルクシズム)、保守主義(コンサバティズム)。
政治、経済、文化。
民主主義(デモクラシー)、官僚主義(ビューロクラシー)、全体主義(ファシズム)。
1年生(数人):藤木忍、矢代(小悪魔のような)、森(小太り)、石井(のっぽ)、
大学生の先輩:春日(医学部)