1. 文様の付け方

    表紙に文様を付けるやり方には、艶出し(つやだし)型押し(かたおし)と、二つの方法があります。艶出しと型押しとは、同じ技法の表裏の関係にあります。

    Pic.

    表紙の用紙は、すこし厚めの紙(漉き返しと呼ばれる再生紙を使う)に片側だけ色染めした薄い紙を貼り合わせてあります。
    型押しを施すときは、色紙の側を文様の木型にあてます。
    艶出しなら、反対側を木型にあてます。馬連で強くこすると、文様が附きます。

    自分でも実験してみてください。十円玉の上に紙を載せ、紙を木や堅いプラスティックでこすります。こすった面が艶出しです。十円玉(木型に相当する)に接した面が型押しです。

    このほか、摺り付け表紙といって、絵柄を色刷りで印刷した表紙もあります。

  2. 文様のさまざま

    文様の多くは、つなぎ文様といって、連続する文様となって表紙全体を覆っています。和本の前表紙と後表紙とは、おおよそ同じ色・文様・技法(つまり揃い)となっています。違っている場合は、おそらく後補表紙でしょう(あとから付け替えたもの)。

    紗綾形(さやがた)、卍(まんじ)つなぎとも。最も多い文様
    松皮菱(まつかわびし)
    小葵(こあおい)
    蜀江(しょっこう)、蜀江の錦(―のにしき)
    網目(あみめ)
    分銅つなぎ
    麻の葉(あさのは)
    七宝(しっぽう)
    青海波(せいがいは)
    籠目(かごめ)
    立湧(たてわく、たてわき)
    江霞(えがすみ)エの字で霞を描いている。
    花菱(はなびし)。唐花(からはな)。
    三重襷(みえだすき)。
    武田菱が三重の枠に入っている。
    菱紋(ひしもん)
    唐草(からくさ)
    亀甲(きっこう)
    毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)
    工字(こうじ)つなぎ
    雷門(らいもん)つなぎ

  3. 糸綴じのしかた

    西洋の書籍が皮革と接着剤でがっちり出来ているのに対して、日本の書籍は糊を使わず、糸で綴じるだけです。この関係は、石や煉瓦で作られた西洋家屋と木や草と紙で出来ている日本家屋とでパラレルです。吹けばとぶような構造をしていますが、それゆえ却って丈夫でもあります(そもそも和紙が丈夫だからですが)。西洋の本はがっちりしている分、素人では補修が難しいでしょうが、和本は簡単です。

    和綴じ本の糸は切れやすいですが、糸が切れることで紙が切れず、本を守っています。糸は基本的に消耗品ですし、およそ木綿の白い糸が使われるのが通例ですから、とくに元糸(オリジナルの糸)にこだわる必要は無いでしょう。切れかかったら、自分で修理します。もとの糸を残したまま補修する人もいますが、あまり意味はありませんから、すべてきれいに取り去ります。

    1. 糸と針を用意します。糸は本の縦寸の三倍程度。糸は二重にせず、一重で縫っていきます。糸の片側に結び目を作ります。

    2. 冊子本体の糸を通す穴は、すでに開いています。針のちからで新しく穴をあけてはいけません。既に開いている穴を針でたどるだけです。

    3. 実際にはじめてみましょう。どこから初めても良いのですが、四つ目穴であれば、上から三つ目から始めることにします。まず、背小口をかるくめくり、針を斜めに刺します(A図)。4〜5枚ほど刺し抜いたら、穴に通して、表に針を出します(B図)。

    4. 一筆書きのように順に糸をとおしていくだけです。途中で糸を結んだりはしません。背に通したら次の穴に移る、をくりかえします。間違えたら、やり直しましょう。

    5. おしまいの処理のしかた(C図)。針をT字の糸の下を通し、結び目を指で押さえて糸をひっぱります。糸は結ばれます。もう一度、針を穴に戻して反対側から出し、すこしひっぱり糸をはさみで切るとできあがりです。