原義
広辞苑(第3版):「キャラクター」@性格、人格。A小説・映画・演劇中の登場人物。B文字・記号。
→ 的確だが、@ABそれぞれの(構造的)関係は不明である。@〜Bの順序は、語源や意味発生の順序ではなく、使用頻度順であろう。
日本国語大辞典(第2版)略記:「キャラクター」@(人の)性格。性質。ひとがら。持ち味。また、芝居、映画、小説、漫画などの登場人物、役柄をいう。*用例「明六雑誌」1875……中島梓「にんげん動物園」1981まで5例。A一体系としての文字、記号。イ、表意文字、漢字。ロ、(コンピュータに使われるもので、英数仮名漢字のいわゆる文字(図形文字)と制御記号)。B広告宣伝物または広告活動が一貫してもっている個性。企画から展開の過程で独自に創造するものや有名人、動植物などを利用する場合などがある。
→ 案外よく書けているな、特にB。こうなると広辞苑第7版(最新)も気になる。
旺文社 コンプリヘンシブ英和辞典:character
- @(人や物の総体的な)性格、性質、気質。(個々の)特徴、性格、特質。→QUARITY(質)。
- A品性、品格;(すぐれた)人格、徳性。(類)character 人物評価の基準となる人特有の道徳的特性。individuality 他人とはっきり違う個人的特徴、personality 外見と内面的特徴が一体となって他人に与える印象。
- B(特に良い)評判、名声。
- C《英古風》人物評価記述。
- D地位、身分。
- E《古》人物。
- F《口》変わり者、奇人。
- G(劇・映画・歴史上または物語中の)登場人物、配役;(17〜18世紀の英文学で)人物描写、性格描写(character sketch)
- H文字;記号、符号。
- I《集合的》(一言語の)文字;書体。
- J《コンピュータ》キャラクター(文字および記号類)。
- K《発生》形質。
- L《廃》暗号、暗号通信。……
vt.《古》(性格を)@描写する、記述する。A……を彫刻する、刻む、彫る。……a. 〜ful 特徴のある、独特な。
語源[古フランス<ラ<ギ kharassein しるす、彫り刻む<kharax とがった棒]
O.E.D. character, n. てきぎ省略し、また訳語を付加した。
[ME中英. caracter(e, a. F仏. caractere, ad. L羅. character, a. Gr希. instrument for marking or graving, impress, stamp, distinctive mark, distinctive nature,他と区別される印を付け、彫り、押す道具 ……]
- I. Literal senses. 文字としての意味
- 1. a. A distinctive mark impressed, engraved, or otherwise formed;押印、刻印その他の方法で印づけられた、他と区別可能な印〔書写ヨリモ型押デアル〕。 a brand, stamp ブランドスタンプ.
- 2. A distinctive significant mark of any kind 他と区別可能な意味のある(重要な;署名された)印などその他; a graphic sign or symbol図形的なサイン(表象、印章)、象徴. 〔こちらは書写っぽい〕
- 3. a. esp. A graphic symbol standing for a sound, syllable, or notion, used in writing or in printing; one of the simple elements of a written language; e.g. a letter of the alphabet.
- b. spec. in pl. Shorthand. Obs.
- c. Computers. ……
- 4. collect. a. gen. Writing, printing. 〔書写、押印ともに〕
- b. The series of alphabetic signs, or elementary symbols, peculiar to any language; a set of letters. 文字体系、文字セット
- c. The style of writing peculiar to any individual; handwriting. 書体のこと
- d. Kind or style of type or printed letter. 文字フォントのことですね
- 5. A cabbalistic or magical sign or emblem; the astrological symbol of a planet, etc.; = charact 2. カバラ(ユダヤの魔法)やその他の魔法の文字
- 6. gen. A symbol, emblem, figure シンボル、エンブレム、フィギュア(象徴、図表、図形); an expression or direct representation. 表現または直接的再現。
- 7. A cipher暗号 for secret correspondence.
→ 他と異なる、区別なものとしての特徴をいうわけですね。では、他とは何か、が問題でしょう。
II. Figurative senses. 図形としての意味
- 8. a. A distinctive mark, evidence, or token; a feature, trait, characteristic. 区別可能な印、証拠 arch. in gen. use.
- b. now esp. in Natural History 自然誌において. One of the distinguishing features of a species 種 or genus 類 . See also acquired character s.v. acquired ppl. a. (c).
- 9. The aggregate of the distinctive features of any thing; essential peculiarity; nature, style; sort, kind, description.
- 10. The face or features as betokening moral qualities; personal appearance. Obs.
- 11. The sum of the moral and mental qualities which distinguish an individual or a race, viewed as a homogeneous whole; the individuality impressed by nature and habit on man or nation; mental or moral constitution.
- 12. a. Moral qualities strongly developed or strikingly displayed; distinct or distinguished character; character worth speaking of.
- b. transf.
- 13. a. The estimate評価 formed of a person's qualities; reputation評判: when used without qualifying epithet implying ‘favourable estimate, good repute.’
- b. transf. of things.
- c. by character: by repute or report. in (great) character: in (good) repute. Obs.
- 14. a. A description, delineation, or detailed report of a person's qualities.
- b. transf. of things. Obs.
- c. esp. A formal testimony given by an employer as to the qualities and habits of one that has been in his employ.
- 15. Recognized official rank; status; position assumed or occupied. Now influenced by sense 17.
- 16. a. A person regarded in the abstract as the possessor of specified qualities; a personage, a personality.
- b. colloq 口語 . A person, man, fellow やつ (freq. slightly derogatory: cf. sense 18).
- 17. a. A personality invested with distinctive attributes and qualities, by a novelist or dramatist 小説家や劇作家によって与えられた(投資された)、他と区別可能な属性、性質としての人物性; also, the personality or ‘part 登場人物、役柄’ assumed by an actor on the stage. 舞台上の俳優によって与えられた(装われた)役柄の人間性。
- b. in (or out of) character: in (or at variance with) the part assumed; hence gen. in (or out of) harmony, appropriate, fitting.
- 18. colloq. An odd, extraordinary, or eccentric person.
- 19. attrib. or in comb.派生語, as character-drawing, -formation, -monger, -study, -trait, etc.
; character-building, -forming, -making, -moulding, -reading, -training ns. and adjs.; also character-actor, an actor who specializes in character parts
; so character-act v., character-acting, -actress; character assassin, one who destroys the reputation of another person
; so character assassination; character comedian, a character-actor specializing in comic roles
; character dance, (a) Ballet, a dance which interprets a real or imaginary personality; (b) a characteristic national dance
; so character dancer, character dancing; character part, an acting role displaying pronounced or unusual characteristics or peculiarities
; character set Computing, a set of letters, digits, and other characters that can be drawn on to represent data, usu. varying according to the hardware involved
; character-sketch, a brief description of a person's character; so character-sketching
; character string Computing, a linear sequence of characters, esp. stored in or processed by a computer
; character-structure, the various traits in a person's character, seen as forming a system in which some are more important than others.
→いろいろ細かかったが、結局は、広辞苑でも済んだ感じ。ただし日国のBは貴重かな(人物を超えた、広告云々)
ふたたびまとめると、まず刻まれることが原義で、刻むことによって他と区別可能な特徴を持つこと。なおそれは、言葉(文字)において、または図像において、行われている。そもそも文字と図形との差異は微妙であったろう(cf.象形文字)。さらには、それが人間の特徴として現われていく。その分かりやすい例としては、この現実の人間よりも、劇作や小説などフィクションの登場人物がそれに当たるが、この現実とてたぶん、生きることは特徴づけられていくことであったはずだ。人間は、最初から個性を持っているというよりは、あるいは生きながら個性を獲得していくのではかろうか。なぜなら、他と区別されない普遍性も持っているはずだから。加えて言えば、現実か虚構(フィクション)という区別も曖昧である。「現実と虚構との区別は、対象を個体として認識するか否かにかかっている」とかつて述べました。『楳図かずお論』第6章終節 p.195「対象を個体として感受すること。そのとき、その対象はフィクションであるか現実であるかという区別をも超えるだろう。」元になった論文があります「タマミの御霊」
人間に関する二つの流れ
キャラクターでいう、区別可能な特徴。→ 現働化された現実的特徴 actuality
普遍的な、区別の無い共通の人間的特性→ 潜在的な理想的特徴 virtuality
それらは、一貫して現われているか、時に応じて断片的にあらわれるか?
どこまでがキャラクターか(実例でみる)
- ふだんのみなさん、大学でのみなさん、バイト先でのみなさん
- ビートたけし。タモリ。あかしやさんま(北野武。森田一義。杉本高文)
- 志村ケン。ひとみばあさん、バカとの。ビートたけし、鬼瓦権造。石橋貴明、保毛尾田保毛男。友近(変幻自在のキャラ姉さん)。バカリズム。
- ミュージカル舞台の役柄。ピーターパン、ジャンバルジャン(レミゼラブル)、ドンキホーテ(ラマンチャの男)
- 安倍晋三。麻生太郎。菅義偉。岸田文雄。石破茂。
これらは、キャラクター(ペルソナ)と素(素顔)
三国志など、やたら登場人物が多い物語において、特徴づけられる人物がいかにして作り出されるか。
図像として
- マーク、エンブレム(家紋、紋章、国旗)
- 商品広告に人物が描かれること。この歴史的解明が不可欠であるが、まだ詳しくない。歌川国貞に東海道五十三次と美人とが並記されている例がある(舞台の登場人物ではない)。
薬等の商品を慈しむ人物の絵などが引き札に描かれることがある。七福神などが描かれる。これらの人物が、個体性を帯びていく時、商品キャラクターとなっていくのだろう。
だいたい、今日の妖怪研究では、近世期に妖怪はキャラクター化したといわれます(香川雅信『江戸の妖怪革命』)
ほかに、正露丸のマーク(軍人の顔が描かれていた。元々は比較的リアルに、後に簡略化されて、今ではラッパのマークだけになってしまう)
イソジンうがいぐすり、ハンドソープきれいきれい。名前はあるのかな。名前が無いとキャラクターではないか?あるいは、ニャロメ、ケムンパス。擬人化されている。最近の擬人化はすごい。国の擬人化(ヘタリア)。戦車、軍艦、軍用機の美少女擬人化(ガルパンというのは擬人化とは違うのですね)。
動植物であろうと、機械であろうと、擬人化される限りでキャラクター化(特定の性質を持つ個物)していける。
個体化とは何か?ヘタリアは国だし、軍用機器は種類であって、個物ではない。ゼロ戦や隼(種類)と坂田大尉の、加藤大佐の(個物)、とは違う。が、そこに擬個体化が働いている。バルタン星人なども同様である(ウルトラマンシリーズではおよそ一体の宇宙人・怪獣しか出て来ないが、バルタン星人は宇宙船のなかに小型化して一億人入っていた。ウルトラマンはそれをスペシウム光線で全滅させた!)。
同様に、擬特性化もあるだろう。他と区別可能な特徴づけと言いながら、実は、みな極めてパターン化gは進んでいる。ネコ耳、ツインテール、ねがめ、フリル。今日のアニメ絵だけでなく、50年代の貸本漫画での画一化もひどい!
擬自立化、擬キャラ立ち。ディズニーキャラクター、ジブリキャラクター。自立方法も似通っていく。
キャラクターの自己同一性(アイデンティティ)
コマを超えて、それが同一であるための、根拠について。
言葉、図像、行為