鶴亀(謡ナシ) 皇帝 大臣

シテサシ真ノ来序「夫青陽の春になれば。四季の節 会の事始。地「不老門にて日月の。光を天 子の叡覧にて。シテ「百官卿相に至るま で。袖を連ね踵を接いで。地「其数一億百余 人。シテ「拝をすゝむる万戸の声。地「一同 に拝する其音は。シテ「天に響きて。地「夥 し。上歌「庭の砂は金銀の。/\。玉を連 ねて敷妙の。五百重の錦や瑠璃の枢。{石+車} {石+渠}の行桁瑠璃の橋。池の汀の鶴亀は。蓬

莱山もよそならず。君の恵ぞありがたき/\。 ワキ詞「いかに奏聞申すべき事の候。毎年 の嘉例のごとく。鶴亀を舞はせられ。其 後月宮殿にて舞楽を奏せられうずるにて 候。シテ詞「ともかくも計らひ候へ。地「亀 は万年の齢を経。鶴も千代をや。かさぬ らん。子方二人中ノ舞「。上歌「千代のためしの数々に。 /\。何を引かまし姫小松の。緑の亀も。 舞ひ遊べば。丹頂の鶴も。一千年の。齢 を君に。授け奉り。庭上に参向申しけ れば。君も御感の余りにや。舞楽を奏し て舞ひ給ふ。月宮殿の白衣の袂。月宮殿 の白衣の袂のいろ/\妙なる。花の袖。 秋は時雨の紅葉の羽袖。冬は冴えゆく雪 の袂を。翻へす衣も薄紫の。雲の上人

の舞楽の声々に霓裳羽衣の曲をなせば。 山河草木国土豊に。千代万代と舞ひ給へ ば。官人駕輿丁御輿を早め。君の齢も長

生殿に。/\。還御なるこそ。めでた けれ。