講演会.umezu.半魚文庫
楳図かずおと戦後の漫画出版展

2002年美大祭・楳図かずお講演会関連展示

このページは、展示に伴い作成したパンフレットをHTML化したものです。

企画担当 高橋明彦(半魚文庫)
期間 2002年10月25日〜11月11日
場所 附属図書館・展示コーナー
協力 附属図書館、ビジュツDE部

本来は附属図書館の蔵書を展示するコーナーではありますが、2002年美大祭の「楳図かずお講演会」にちなんで、戦後のまんがの出版の様相のほんのサワリ程度ではありますし、それほど珍しくないものも含みますけれども、半魚文庫蔵書の一部を展示します。

  • 排列は、ほぼ時代順とした上で、ジャンル別にならべました。
  • 展示品の詳細については、高橋明彦(一般学科)にお問い合わせください。

    ○ 『新宝島』以前

    ( 1) タコの行水

      酒井七馬
      1946年 漫画書院(大阪) B6判

      ※ 手塚治虫『新宝島』(1947年)以前の漫画の一つ。本というよりはオモチャに近く、十銭本などと呼ばれ、駄菓子屋や夜店で売られた。


    ○ 貸本マンガ・B6判ハードカバー期

    1948年、「ネオ書房」(神戸の貸本屋)型の貸本屋が登場した。それまでの古本貸し出し・保証金制度と異なり、新刊本の会員制信用貸しという制度が新しく、全国にこの方法が広まった。小説やマンガ、雑誌などを貸し出した。貸本屋は最盛期1950年代には全国で三万軒以上あったと言われ、これだけの店舗が存在すれば、それに付随する商業圏域が成立する。貸本向け単行本(貸本マンガ)は、それを刊行する専門の小規模出版社があり、専用の流通に乗って、全国の貸本屋に供給された。10代の少年少女はこれをむさぼり読んだのである。テレビが一般的でなかった時代の消費文化だし、およそ「作品」と呼べないような代物も多いが、今日でも十分に読める名作も数多い。そして、いい加減な作者はその何十倍といたにせよ、ともかく若い才能が情熱をもって集っていたのである。楳図かずおももちろんその一人であった。

    ( 2) 森の兄妹(複製版)

      ウメズカズヲ(山路一雄)・水谷武子
      1955年 トモブック社(東京)長編漫画4 B6判ハードカバー

      ※ 楳図のデビュー作。グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を元に中学生の時に描いた作品。水谷武子を迎え入れた合作形式で、中盤を担当してもらっている。

    ( 3) 若衆剣法

      田中ちかお
      1955年4月1日 トモブック社(東京)傑作面白漫画44 B6判ハードカバー

      ※ 『別世界』と同シリーズの一冊。作者は無名作家(だろう、たぶん)

    ( 4) 別世界(複製版)

      ウメズカズヲ
      1955年9月1日 トモブック社(東京)傑作面白漫画52 B6判ハードカバー

      ※ 単独デビュー作品。手塚の影響を脱した装飾的な絵柄で、原始社会を舞台に終末SFを展開した傑作。

    ( 5) 剣魔往来

      小山げんじ
      1955年ころか(無年記) 三島書房(大阪) B6判ハードカバー

      ※ 『底のない街』と同シリーズの一冊。これも名も無き作家。

    ( 6) 底のない町(複製版)

      楳図一雄
      1956年(無年記) 三島書房(大阪) B6判ハードカバー

      ※ 怪奇趣味的なテイストで少年探偵・岬一郎の活躍を描いた。岬一郎はシリーズ化され、また最近作『14歳』でも岬一郎首相として復活した。

    ( 7) 幽霊を呼ぶ少女(複製版)

      楳図かずお
      1958年(無年記) 三島書房(大阪) B6判ハードカバー

      ※ 少女モノで、恐怖的作風の萌芽的な作品。

    ( 8) ボスを逃すな

      佐藤まさあき
      1958年(無年記) わかば書房(大阪) B6判ハードカバー


    ○ 貸本マンガ・A5判ハードカバー期

    貸本マンガの判型には流行が有り、時期によってほぼその大きさが決まっている。1950年代後半から、判がすこし大きくなり、A5判のハードカバーの形式が主流となるが、この時期は比較的短い。また、貸本マンガの多くは、読者に対して「あー昔の本か」と思われないように、年記がないのがほとんど。

    ( 9) 鍵 4号

      楳図かずお、さいとう・たかを、村橋わたる、佃竜二
      1957年(無年記) わかば書房(大阪) A4判ハードカバー

      ※ 劇画調の短編誌。岬一郎シリーズの「ほくろの怪」所収。


    ○ 大手月刊漫画雑誌の附録(1)

    貸本マンガがVシネマやインディーズに近いとすれば、メジャーは大手出版社による月刊誌であった。少年向け・少女向け等があり、新刊本屋で売られた。月刊誌には何冊もの別冊附録が付いた。

    (11) トモ子漫画文庫 11号

      楳図かずお、赤塚不二夫、ほか
      1958年5月 集英社(月刊『少女ブック』附録) A5判

      ※ 楳図の読み切り作品「お百度少女」を所収。「トモ子」とは、当時の子役スター松島トモ子。実写版『サザエさん』のワカメほか、ミネラル麦茶やライオンに囓まれたことでも知られる。

    (10) トモ子漫画文庫 12号

      楳図かずお、赤塚不二夫
      1958年6月 集英社(月刊『少女ブック』附録) A5判

      ※ 楳図の連載作品「母よぶこえ」を所収。巻頭カラー。


    ○ 貸本マンガ・A5判ソフトカバー期

    貸本マンガで最も多い形態が、このA5判ソフトカバーで、1950年代末頃から現れる。また、一人一作の書き下ろし作品である「単行本」とは別に、二〜五人くらいでそれぞれが短編や連載を執筆するアンソロジー形式の「短編誌」もころころに流行した。

    (12) 花 19号

      楳図かずお、浦きよみ、田中美弥子、田中美智子、佃竜二
      1960年ころ(無年記) わかば書房 A5判ソフトカバー

      ※ 少女向け貸本短編誌。楳図「月見草の少女」(読み切り)を所収。表紙は高橋真琴。後の佐藤プロにも「花」という短編誌があるが、出版社(者)は全く別物。

    (13) 虹 40号

      楳図かずお、矢代まさこ、さが・みゆき、桑田知子
      1963年1月ころ(無年記) 金園社(東京) A5判ソフトカバー

      ※ 楳図「狐つき少女」を連載している。

    (14) 影 32号

      松本正彦、水島新司、桜井昌一ほか
      1959年ころ(無年記) 日の丸文庫(大阪) A5判ソフトカバー

      ※ 「劇画」を作った典型的な貸本短編誌。1955年創刊。ただし、楳図は参加していない。

    (15) すみれ 3号

      谷悠紀子、桑田知子、花村えい子、田中美智子、上原紀子
      1960年ころ(無年記) 金龍出版社(大阪) A5判ソフトカバー

      ※ 金龍出版社(金園社)の少女向け貸本短編誌で、『虹』の妹分的存在。楳図はイラストなども描いている。

    (16) 恐怖の地震男

      楳図かずお
      1965年(無刊記) 東京トップ社 A5判ソフトカバー

      ※ 貸本単行本。現代日本とアトランティス伝説や日本神話とをダイナミックに結び付けたSF傑作。東京トップ社は、60年代末には倒産するが、その編集者だった熊藤男は秋田書店へ移り編集者として辣腕を揮った。

    (17) 雪の花

      楳図かずお
      1963年(無年記) ひばり書房 A5判ソフトカバー

      ※ 「楳図かずお幻想ロマン」と銘打ってシリーズ化された、ひばり書房の貸本単行本。山の伝説をSF的なタイムパラドックスで解釈した名作。

    (18) ヤングビート 1号

      楳図かずお、佐藤まさあき、旭丘光二、みね武
      1966年ころ 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 所収楳図作品は、1963年執筆の「くも妄想狂」(初出『劇画マガジン』佐藤プロ)。貸本マンガ業界では、既発表作を別の本に再掲載する例が多くあった。

    (19) 怪談 90号

      小島剛夕、楳図かずお、古賀新一、浜慎二
      1962年ころ(無年記) つばめ出版(=ひばり書房) A5判ソフトカバー

      ※ 怪奇・恐怖モノ専門の貸本短編誌。楳図「目なし地蔵」(読み切り)を所収。ひばり書房は貸本業退転の後、新書判の「ひばりコミックス」シリーズで、大手に進出出来なかったマンガ家たちのB級怪奇マンガを出版した。これは80年代まで存続し、立風書房の「レモン・コミックス」とならんで、良くも悪くもマイナー・メイニアックなラインナップとなった。

    (20) 花 1号

      楳図かずお、花村えい子、望月あきら、新城さちこ
      1964年5月ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 佐藤プロの少女向け貸本短編誌。奇数隔月刊だったと思われる。メイン作家はもちろん楳図であり、7回に渉って「へびおばさん」を連載した。表紙は高橋真琴が担当、楳図は本誌の扉絵を描いた。20号まで刊行され、別冊号も幾つかあるようである。

    (21) 花 6号

      楳図かずお、池川伸治、望月あきら、川崎三枝子
      1965年3月ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 楳図「へびおばさん」を連載。望月作品もまあまあシャレてる。

    (22) 花 7号

      楳図かずお、花村えい子、新城さちこ、さが・みゆき
      1965年5月ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 楳図「へびおばさん」の最終回。

    (23) 花 10号

      楳図かずお、川崎三枝子、池川伸治、山谷ルミ子
      1965年11月ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 楳図「狐がくれた木のはっぱ」を連載。

    (24) 17才 1号

      楳図かずお、佐藤まさあき
      1963年ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 佐藤プロのハイティーン向けの貸本短編誌。偶数隔月刊かだったようである。楳図は、「ロマンス療法」「太郎さん羽奈子さん」「キューピッド」などのラブコメディを描いた。表紙も楳図が担当した。

    (25) 17才 2号

      楳図かずお、佐藤まさあき
      1964年ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 「太郎さん羽奈子さん」連載中。

    (26) 17才 11号

      楳図かずお、佐藤まさあき、下元克己
      1964年ころ(無年記) 佐藤プロ A5判ソフトカバー

      ※ 「キューピット」を連載中。

    (27) ママがこわい

      楳図かずお
      1966年1月ころ(無年記) 佐藤プロ (花文庫 2) A5判ソフトカバー

      ※ 1965年、講談社の少女週刊誌『少女フレンド』(1963年創刊)に連載された本作は、佐藤プロから単行本として刊行された。今見てもこの表紙はこわい。

    (28) ミイラ先生 (前後2冊)

      楳図かずお
      1967年ころ(無年記) 佐藤プロ (花文庫 14,15) A5判ソフトカバー

      ※ 1967年『少女フレンド』に連載した作品を佐藤プロが単行本化したもの。

    (29) ふりそで小町捕物帳

      楳図かずお
      1967年ころ(無年記) 佐藤プロ (花文庫 18) A5判ソフトカバー

      ※ 1967年『少女フレンド』に連載した作品を佐藤プロが単行本化したもの。同じ連載だった「木の肌花嫁」を併載する。


    ○ 大手月刊漫画雑誌の附録(2)

    講談社の月刊『なかよし』には楳図による別冊附録の作品が多い。これらの作品は、同社『少女フレンド』に連載したもののほか、かつて貸本マンガに掲載した作品なども再録されている。この附録作品が、その後、秋田書店サンデーコミックスに受け継がれる。

    (30) へびおばさん

      楳図かずお
      1966年8月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

    (31) 紅ぐも少女

      楳図かずお
      1968年1月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

      ※ 講談社の週刊『少女フレンド』に連載された(1965年)『紅グモ』を別冊附録としてまとめたもの。

    (32) きつねつき少女 (全2冊)

      楳図かずお
      1966年12月 1967年1月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

    (33) 生き人形

      楳図かずお
      1967年11月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

    (34) まだらの少女

      楳図かずお
      1967年7月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

    (35) 夜がこわい

      楳図かずお
      1967年4月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

      ※ 貸本短編誌『虹』に連載された「今夜もおみっちゃんがやってくる」の改題・トレース作。

    (36) こわいまんが特集

      楳図かずお
      1967年8月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

      ※ 「のろいの面」、「赤い服の少女」、「狐がくれた木のはっぱ」を所収。

    (37) すきすきすき!!

      楳図かずお
      1967年12月 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ

      ※ 表代作と「きらいきらい!」を収める。

    (38) まぼろしの火が消える

      楳図かずお
      1967年9月増刊号 講談社(月刊「なかよし」附録) B6判平綴じ


    ○ 末期の貸本マンガ

    1960年代に入るとテレビの普及等により貸本屋は徐々に減ってゆき、1960年代中頃から後半に至って、多くの貸本マンガ出版社が撤退、倒産した。その最後の時期に、目先を変えるべく、B6判やB5判等のさまざまなサイズの本が出版されている。

    (39) マスクボーイ

      楳図かずお
      1965年1月 東邦図書出版社(ホームランブックス17) B5判

      ※ ホームランブックスは月2回発行。貸本マンガの版元東邦図書出版が、一般書店での販売用に作ったシリーズ。大きさも雑誌を意識したB5判になっている。描き下ろしのほか、横山光輝『伊賀の影丸』等、雑誌漫画の収録もあった。本作は、楳図作品で唯一のヒーロー物。

    (40) 偶然を呼ぶ手紙

      楳図かずお
      1968年ころ(無年記) 佐藤プロ(B6判 花文庫) B6判ソフトカバー

      ※ 1968年『ティーンルック』(主婦の友社・週刊誌)で連載した作品。

    (41) へびおばさん

      楳図かずお
      1968年ころ(無年記) 佐藤プロ(B6判 花文庫) B6判ソフトカバー

      ※ A5判ソフトカバーで刊行されたものを、B6判で再版した。

    (42) かげ

      楳図かずお
      1968年ころ(無年記) 佐藤プロ(B6判 花文庫) B6判ソフトカバー

      ※ 1968年『ティーンルック』(主婦の友社・週刊誌)で連載した同作品を、佐藤プロが初めて単行本化したもの。

    (43) S・F & 怪談

      小島剛夕、楳図かずお、浜慎二、ほか
      1966年4月 ひばり書房 変型新書判

      ※ ひばり書房の、新書判単行本の初期のもの。新書判ふうだが、すこしだけ横長、しかし四六判ほど大きくないし、ともかく定番の形とはならなかった。


    ○ 月刊漫画から週刊漫画へ

    1959年春、小学館『少年サンデー』、講談社『少年マガジン』が創刊される。週刊少年誌の誕生である。月刊マンガ誌は、すぐにすたれたわけではないが、その後、1963年に『少年キング』、1969年に『少年チャンピオン』『少年ジャンプ』が創刊され、少年・少女マンガは週刊誌に主流が移ってゆく。週刊化に伴って作品自体も、長い連載で多くのページを使ってストーリーを描けるようになり、単なる事件の記述から人物の心理・性格描写などが可能となり、マンガはより厚みを増した。

    (44) 少年画報

      1966年9月号 少年画報社 B6判平綴じ

      ※ 一時代を築いた月刊誌の雄『少年画報』。本号には「大怪獣ドラゴン」を連載。

    (45) 少年画報

      1967年10月号 少年画報社 B6判平綴じ

      ※ 「笑い仮面」連載。

    (46) 少年キング

      1968年47号(11/17) 少年画報社 B6判平綴じ

      ※ 「猫目小僧」を連載。『少年画報』の「怪物くん」(藤子不二雄)、『少年マガジン』の「ゲゲゲの鬼太郎」(水木しげる)などと、妖怪マンガのブームを牽引した。表紙に見える「長沼健のサッカー教室」がなんとも。

    (47) 平凡

      1966年7月号 平凡出版 B5判平綴じ

      ※ 平凡出版(現在のマガジンハウス社)の芸能(スター情報)誌。『明星』(集英社)と人気を二分した。楳図は同誌に足掛け五年に渉って「高校生記者シリーズ」(のちに『恐怖』としてまとめられた)を連載した。芸能誌ゆえマンガコーナーは少なく、楳図を初め、石森章太郎、赤塚不二夫など当時のいわゆる一流どころしかお呼びでなかった。

    (48) 平凡

      1966年12月号 平凡出版 B5判平綴じ

    (49) 少女フレンド

      1967年11号(3/14) 講談社 B5判平綴じ

      ※ 「ミイラ先生」所載。

    (50) COM

      1968年8月号 虫プロ商事 B5判平綴じ

      ※ 手塚治虫が出したマンガ月刊誌。創刊は1967年1月。マンガの高度化と研究とを目指したかなりハイレベルな雑誌。「まんがエリートのための」というコピーがいかにも。楳図は「ストーリーまんが家によるギャグマンガ集」という特集で4コママンガ「チイ子さん」を描いた。マンガ雑誌のニューウェイブとして、「カムイ伝」を擁する青林堂『ガロ』と人気を二分した。

    (51) 少年サンデー

      1969年25号(6/15) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 「おろち」新連載号。なお、楳図は、これまで講談社・小学館・少年画報社ほか多数の雑誌で多作していたが、70年代以降、『少年サンデー』『ビッグコミック』など小学館の雑誌を発表の舞台とする。

    (52) 少年サンデー

      1969年26号(6/22) 小学館 B5判平綴じ

    (53) 少年サンデー

      1970年43号(10/18) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 「アゲイン」新連載号。この時期の表紙は『少年マガジン』の影響を受け、妙にアーティスティック。

    (54) 少年サンデー

      1972年22号(5/21) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 次号より連載の「漂流教室」の予告頁がある。

    (55) 少年サンデー

      1977年15号(4/10) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 『少年サンデー』の創刊19年目突入号。当時連載された「まことちゃん」は同誌でも絶大の人気を誇り、芸能界なども捲き込んで全国的なブームとなった。表紙は、楳図画のまこと虫。

    (56) 少女コミック

      1975年43号(10/19) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 「洗礼」第2部開始号。巻頭カラー。


    ○ 新書判コミックスの登場

    新書判のコミックスの嚆矢は、コダマプレス社のダイヤモンドコミックスと言われている。版型の形態的には、いまもその続き。もともと大手出版社はマンガを月刊・週刊雑誌で出版する意識しかなかったが、これ以後、大手も単行本を出版しはじめてゆく。そのうちでも小学館「少年サンデーコミックス」はかなり遅く1974年になって初めて刊行されたが、その1号が『漂流教室』(非展示)である。

    (57) 忍者旋風 (全4冊)

      白土三平
      1966年 コダマプレス(ダイヤモンドコミックス) 新書判

      ※ すいません。1巻目は持ってないので展示できない。

    (58) まだらの少女

      楳図かずお
      1968年6月 集英社(コンパクトコミック) 新書判

      ※ 大手出版社での単行本刊行は集英社が早いほうだった。

    (59) 赤目

      白土三平
      1968年4月 集英社(コンパクトコミック) 新書判

    (60) 紅グモ

      楳図かずお
      1968年8月 朝日ソノラマ(サンコミックス 69) 新書判

      ※ サンコミは、総数900タイトルを数える最大級のマンガレーベルとして君臨し、名作も多かった。

    (61) 黒いねこ面

      楳図かずお
      1967年4月 秋田書店(サンデーコミックス) 新書判

      ※ 秋田書店のサンデーコミックス(秋田サンデー、デーコミなどと略称する)は、1966年7月の石森章太郎『サイボーグ009』を嚆矢として、約400冊を刊行し、1991年まで続いたレーベル。現在でも手塚作品等で復刻版が出されている以外では、徐々に絶版化しつつあるが、楳図作品はまだかなりこれで読めるものがある。


    ○ 単行本の多版型展開

    同じ内容の本を版型を変えて再版するのは、商業出版が始まった江戸時代からの本屋商売の常套手段であった。文庫判のマンガは、1970年代後半に最初のブームを作った。その後今日まで周期的に文庫判や愛蔵版の出版はブームとなる。

    (62) 恐怖 (全3冊)

      楳図かずお
      1971年 秋田書店(サンデーコミックス) 新書判

      ※ 月刊『平凡』連載の「高校生記者シリーズ」は、一部が佐藤プロのB6判花文庫として刊行したが、佐藤プロ退転後には『恐怖』と題して秋田書店が独占的に単行本化した。また、以下で見るように、判を変えて何度も再版された。

    (63) 恐怖 (全3冊)

      楳図かずお
      1976年 秋田書店(秋田漫画文庫) 文庫判

      ※ 秋田漫画文庫は、1976年、手塚『時計仕掛けのりんご』を嚆矢として1984年まで330冊ほど刊行された。楳図作品はこの『恐怖』のほか、『のろいの館』(1冊 1976)、『アゲイン』(全6冊 1976)、『怪』(全3冊 1977)、『黒いねこ面』(1冊 1977)がある。

    (64) 恐怖 (全2冊)

      楳図かずお
      1985年 秋田書店(ACセレクト) B6判ソフトカバー

      ※ ACセレクトには、ほかに『おろち』(3冊/1984)、『洗礼』(3冊/1985)、『黒いねこ面』(1冊/1985)、『鬼姫』(1冊/1986)、『怪』(全2冊/1987)、『ミイラ先生』(1冊/1986)の6種類がラインナップされる。

    (65) 恐怖 (全2冊)

      楳図かずお
      1990年 秋田書店(豪華版) 四六判 上製

    (66) 恐怖 (全2冊)

      楳図かずお
      1995年 秋田書店(秋田文庫) 文庫判

      ※ 新しい秋田文庫。楳図以外では、手塚の『BJ』や石森の『009』など、多くの作品が出版されている。

    (67) イアラ (全6冊)

      楳図かずお
      1974年8月〜1975年1月 小学館(ゴールデンコミックス) 新書判

      ※ 小学館の青年誌『ビッグコミック』に連載された「イアラ」を中心に、同誌に読みきり掲載された諸短編作品を所収した。小学館・ゴールデンコミックスは、小学館が青林堂の月刊誌『ガロ』に連載された「カムイ伝」を販売するために作ったレーベル。1966年刊の「カムイ外伝」を嚆矢として、1971年の「カムイ伝」完結までに120冊を刊行した。その後、『イアラ』『藤子不二雄異色短編集』(全6冊 1977〜1987)、『カムイ伝第二部』(全20冊 1989〜1998)が出た。

    (68) イアラ (全5冊)

      楳図かずお
      1980年 小学館(小学館文庫) 文庫判

    (69) 異色短編傑作選 イアラ

      楳図かずお
      1984年7月 小学館 菊判上製(箱入)

    (70) イアラ・イアラ短編シリーズ (全4冊)

      楳図かずお
      2002年 小学館(小学館文庫 うA-48・うA-64〜66) 文庫判

      ※ 「イアラ」が初めて単独で一冊になった。また、「愛の奇蹟」「ドアのむこう」「内なる仮面」の三冊なら成る。これら四冊で、いわゆる「イアラ」(短編群を含む)として完結する。版自体は「異色短編傑作選」の流用。

    (71) こわい本 (全10冊)

      楳図かずお
      1981年〜1982年 朝日ソノラマ B6判 上製

      ※ 1981年8月刊行開始の楳図かずお選集。これにより再び日の目を見たかつての作品も多い名シリーズ。以下のように、新書判(サンコミックスとハロウィン少女コミック館(非展示)の二種類あり)、文庫判でも再版されている。

    (72) こわい本 (全12冊)

      楳図かずお
      1983年〜1985年 朝日ソノラマ(サンコミックス) 新書判

    (73) こわい本 (全15冊)

      楳図かずお
      1993年〜1996年 朝日ソノラマ(楳図かずお恐怖文庫) 文庫判

    (74) わたしは真悟 (全10冊)

      楳図かずお
      1983年〜1986年 小学館 四六判(ビッグコミックス)

    (75) わたしは真悟 (全7冊)

      楳図かずお
      2000年 小学館 文庫判(小学館文庫)

    (76) 妄想の花園 (全3冊)

      楳図かずお
      2001年8月 小学館 B6判 平綴じ(箱入)

      ※ 貸本時代の作品から80年代の諸作品までのうち、入手困難な作品や単行本未載の作品を集めた待望の好著。解説・中野晴行氏。

    (77) 恐怖劇場 (3冊)

      楳図かずお
      1999年 小学館(MyFirstBIG) B6判

      ※ いわゆるコンビニ本。1985年、B5判全2冊で編まれた楳図アンソロジー豪華本『恐怖劇場』を中味そのままに、この「MyFirstBIG」シリーズにラインナップされた。「ママがこわい」「まだらの少女」「へび少女」の三冊組。なお、各社一斉に参入したこのコンビニ本は、BOOK OFFなど新古書店に対抗するために開発された商品と言われるが、効果のほどは如何なものか。買ってすぐに売られる消費的な作品ばかり描かない(描かせない)、ということこそ本旨であろう。

    (78) 漂流教室 (全4冊)

      楳図かずお
      1999年 小学館(MyFirstWIDE) B6判

      ※ My First WIDEは、My First BIGの長編作品向けバージョン。楳図作品では、ほかに「洗礼」「神の左手悪魔の右手」などがある。


    ○ 青年マンガ誌の登場

    「中学になったらマンガは卒業」というのが昔のよい子だった。青年マンガは、団塊の世代の青年化と同時に起こり、またマンガ作品の内容も、人生や社会を描き、表現方法も高度化なものへと成長してゆく。読者コーナーには文芸批評的な投書が相次ぎ掲載され、楳図の「イアラ」シリーズも大きく取り上げられることが多かった。ただし、80年代以後、数多くの青年誌が創刊され、数が増えるに伴い下らない蘊蓄マンガやサラリーマン漫画なども増える。

    (79) ビッグコミック

      1968年12月(No.9) 小学館 B5判平綴じ

      ※ 1968年創刊の大手出版社による初めての青年誌。楳図は、本号から執筆し常連作家となった。当初は1日発売の月刊誌だったが、すぐに1969年3月から10日25日発売の隔週刊となり、装丁も平綴じから中綴じに変る。

    (80) ビッグコミック

      1970年1月10日号 小学館 B5判中綴じ

      ※ 名作「イアラ」の新連載号。巻頭カラー。

    (81) ビッグコミック

      1970年6月10日号 小学館 B5判中綴じ

      ※ 三ヵ月間の休息へ経て、第2部「イアラ」の連載開始号。

    (82) ビッグコミック スピリッツ

      1982年4月30日号 小学館 B5判中綴じ

      ※ 「わたしは真悟」の新連載号。『スピリッツ』誌は1980年11月創刊(最初は月刊)。

    (83) ビッグコミック スピリッツ

      1986年4月14日号 小学館 B5判中綴じ

      ※ 『スピリッツ』誌の週刊化第一号。「わたしは真悟」終盤の第94話を収める。表紙はビートたけし。松村邦洋ではない。


    ○ ポスター、原画

    原画は、貸本向け単行本出版社も大手雑誌出版社も、「製版のための版下」といった程度の意識しかなく、本が出来てしまった後は、きちんと作者に返却しなかったり、古筆裂れの如くコマ毎に切って読者プレンゼントにしたりと、消費的に扱われていた。そんな時代(60年代半ば)、すでに白土三平は、原画さえあれば版を変えてその後何度も作品を出版できるし、いつかそういう時代がくる、またそういう再読に堪えうる、時代を超えてゆく作品を描かねばならないと訴え、作者が原画を管理することの大切さを出張したと言う。原画の重要性がきっちり認識されるようになったのは、60年代末、新書判単行本が商売になることを大手出版社が気づいた後からであろう。

    (84) 楳図かずお初期作品集・ポスター

      楳図かずお
      1985年 中野書店 51cm×36cm

      ※ 中野書店刊『楳図かずお初期作品集』のための販売用ポスター。予約購読者に配布された。いちおう、本体よりレア。中野書店は、東京・神保町の大手古書店。マンガにも明るく、初めてマンガにプレミアムを付けた古書店として知られる老舗。80年代半ばに、この楳図を初め、水木しげる、松本零士、横山光輝らの初期作品の復刻を行った。もちろん、原画は失われているものばかりであるから、原本を元に復刻したのである。

    (85) くも妄想狂・原画 (一枚)

      楳図かずお
      1964年

      ※ 楳図の原画で、楳図の手元に返されず、現在古書店市場に出回っているものは、ほとんど佐藤プロが関わった作品で、佐藤プロが原画をおろそかに扱っていたためである。青鉛筆の部分は、薄墨を使うところの指定。

    (86) 赤んぼ少女・原画 (二枚続き一枚)

      楳図かずお
      1967年

      ※ 哀しいダーティヒロイン・タマミでお馴染みの「赤んぼ少女」。「呪いの館」「赤んぼう少女」などとも改題された。初出は講談社『少女フレンド』だが、佐藤プロがB6判単行本を出した。たぶん、その際に返却されなかった部分であろうと思われる。扉用の絵であろう。しかし、それにしてもこの密度!


    [参考]

    1. 2002年美大祭・楳図かずお講演会「ウメズのメ!ウメズのズ!」
      http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/umezu/ten/
    2. 半魚文庫 http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/
    3. ビサール渡辺 http://www.angel.ne.jp/~wata/
    4. 真崎守「現代マンガの誕生」『少年マガジン』1971-1号
    5. 長井勝一『ガロ編集長』ちくま文庫
    6. 石子順造・梶井純ほか『現代漫画論集』青林堂


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