登場人物一覧.漂流教室.楳図かずお.半魚文庫

漂流教室

登場人物一覧



論点

以下の登場人物一覧において、考えるべきことは何か。単純に「どんな性格か?」といった、抽象論・観念論に陥ってはいけない。より、具体的な論点を見るべきです。

  1. どのように呼ばれているか

    たとえば、「咲っぺ」は、みんなから「咲っぺ」などと呼ばれているのか?違う。あるいは、「翔ちゃん」は、だれからも「翔ちゃん」などと呼ばれているか?これも、違う。呼称とは、人間関係そのものである。

  2. 服装をチェックせよ

    『漂流教室』においては、同じ服を着ているが、それはいわゆる「服もキャラクターのうち」的お約束ゆえではない。彼らは漂流の当日、着替えを持ってきてなかっただけなのだ。こうした楳図のリアリズムの典型的な例が『洗礼』の上原さくらである。上原さくらは、女の子だから当然だが、毎日違った服を着ている。しかも、なかなかセンスが良い。さて、『漂流教室』では、リアリズムの反面で、確実にその服装は内面のあらわれである。これを専門用語で「心象服飾」という(言わない、言わない)。

  3. 初登場と活躍時とを見極めよう

    クライマックスでその人物は光る。しかし、クライマックスに至る以前から、特に目立たなくとも、その人物は存在している。怪虫と戦って壮絶に死ぬ池垣くん、未来人になってしまう大月くんや美川さん、彼らはずっと最初っから場面に出ているのを見極めよう。

とりあえず、注意点はこんなところですが、以上の事は、現実社会では当たり前のことである。しかし、通常の小説やマンガでは省略される(抽象化される)ことが多い。楳図作品は基本的に、こういう現実性(リアリティ)を持っているのである。


凡例

  1. 順序は任意です。
  2. 初出の数字は、基本的にSB版によってます。(2-123)などとある場合。ただし、SV版によっているものもあります。(,2-123,)などの場合。
  3. 画像はすべて、(C)楳図かずお 1972 です。

名前(その訓み) 所属   初出
説明
高松翔(たかまつ・しょう) 6年3組 男子   全編登場
主人公。
小野田勇一(おのだ・ゆういち) 幼稚園児 男子   1-10
3歳児で、一人息子(4-14)。本名は小野田勇一だが、漂流の前日に出会ったばかりで「ユウちゃん」としか自称していないので、翔らはその本名すら知らない。

つりズボンのひざ当ては、楳図のサインマーク(「図」の字の図案化)。

高松恵美子(たかまつ・えみこ) 翔の母   1-12
母の鑑です。逆の意味で「ママがこわい」。

漂流した子どもたちは着たきりスズメなので、作品中唯一ファンション・ショーが楽しめるキャラクターでもある。左の画像では、うるわしいネグリジェ姿をお目にかけます。

山田信一(やまだ・しんいち) 6年3組 男子   1-26
翔のクラスメイト。給食費を取りに帰ったため、未来に行かずに済む。現代で、翔の母親を助ける。
〔読売巨人軍の18番〕 翔の部屋のポスター   1-41
ジャイアンツの18番のポスターが翔の部屋にある(1-41、1-399頁。桑田真澄ではありません。堀内恒夫でしょうね。
校長 大和小学校校長   1-50
事件当日の朝、朝礼でお話をしたあと給料泥棒に頭を殴られ、気絶していた。
若原先生 教諭 6年3組担任 男   1-50
イヤな、そしてダメな大人の典型かつ象徴。それは関谷ではありません。まさに、この若原君こそが、それです。そして、決して生き残れず、また邪魔な存在でさえある。こういう大人にはなりたくない。

ところで、この人の背広のヘリンボーン柄、ぜんぶ手描きです。

川田咲子(かわだ・さきこ) 6年3組 女子   1-50
女主人公。翔とは隣の席。ちょっとアップ気味のポニーテールが可愛らしく、花柄のブラウスにつりスカートというファッションも庶民的で好感が持てる。

翔は彼女を「咲っぺ」と呼ぶが、こう呼ぶのは翔だけで、女子からは「川田さん」「咲子さん」「咲ちゃん」と呼ばれている。大友くんは密かに咲子を好きで、ラストに告白するのだが、その時に初めて「咲っぺ」と呼ぶ。

よい子の女子代表のようにも思うが、それらの良い行動はみな翔を好きゆえのものであって、常に翔をかばっているためにそうなっているだけで、内発的なものではなく、基本的には自分勝手な女子のように、ぼくには見える。弟たけしも在校生(すぐに死亡)もいるのに、たけしの姉としてよりも、ユウちゃんの母としての自己確立に執念を燃やすあたりも、なかなか末恐ろしい。しかし、その強引な行動力が魅力的でもある。

(はた) 6年3組 男子   1-51
「高松くんでーす。」が第一声(1-51)。翔などとともに、6年3組のやんちゃグループの一人なのだろう。給料泥棒馬内らが落したピストルを拾い、人質になったクラスメイト愛川さんを助けに給食室に行くが、関谷に殺される(1-223)。
大友(おおとも) 6年3組 男子   1-54
6年3組のクラス委員(2-267)。最初のセリフで、翔ちゃんに突っかかる(1-154)。その後、随所に出ているが、初めて名前が分るのは怪虫との最初の遭遇の時(,2-77,2-193?)。小怪虫退治(3-105)の以降、中心的な脇役になる。時に残忍になり、優等生ならではの現実主義者。ダイナマイトも製造できるなど学力は高い。大友の母親は、翔の母親ほどには息子の災難を嘆かないが(4-9)、これは大学生の兄がいる(3-167)からか、単なる冷血な家系からか。

翔は、大友くんのことを一貫して「大友くん」と呼ぶ。逆に大友くんは、基本的に「高松くん」と呼ぶが、好意的な気持ちの場合には「翔ちゃん」とも呼ぶ。もともと二人は仲はよく、高松の家に遊びに行ったりもしていたようである(,2-279,)。

池垣(いけがき) 6年3組 男子   1-54
1-54頁右下が初出。防衛大臣に任命される。やんちゃグループの一人なのだろう。右腕を失いながらも怪虫と最期まで闘う。関谷の籠城する給食室攻防戦などでも活躍し、物語前半の中心的脇役。
柳瀬(保谷)(やなせ/ほや) 6年3組 男子   1-54
父親が医者ゆえ(3-129)本人も医者志望だが、カエルの解剖も出来ないという(1-63)。しかし、ペストの時にも責任感を発揮し(4-129)、大和小学校の医療全般に目配りをし、翔の盲腸の手術も立派に成し遂げる。途中で名前が変るのは本作での有名な謎。僕の説では、複雑な家庭環境のために、公的(先生や新しいクラスの仲間)には保谷と呼ばれるが、以前より慣れ親しんだ友達には前からの柳瀬で呼ばれている、と考えてみてはどうか、と思ったが、こういうのは下らない深読みの例です。初めは、保谷と付けていたが、ヤナセという音にこだわったのでしょう。楳図は奈良の実家時代に、肩凝りが昂じて不眠症になる。その時診てもらった先生が、簗瀬義亮医師。有吉佐和子『複合汚染』にも出てくる青年開業医。この人との出合いが、自然食への注目や環境汚染への危惧など、その後の楳図の考え方を方向付けたという。勿論、本作『漂流教室』への発想も無縁ではない。

2002年刊 My First WIDE版では、冒頭部分も「柳瀬くん」に訂正されました。30年目の訂正……、つまり命銘の路線変更であり、それがそのまま放置されていたということでしょう。

〔チュー子〕(ちゅーこ) 6年3組 女子   1-54
柳瀬くんのとなりの女子。
美川(よしかわ) 6年3組 女子   1-54
未来きのこを食べて、未来人類になってしまう。名前もそうだが、おそらく「ミス大和小学校級の美少女」という設定だと思う。着てる服も、ヒラヒラが付いている。最初から随所に登場するが、名前が分るのは4-262。最後の登場が5-66だが、ここで未来人に食い殺されたのか、生き延びたのかは未詳。ユウちゃんがパンと牛乳を飲むさいにも、「あっだめよ!こぼしちゃ」と言っている。
〔若殿ちゃん〕(仮称) 6年3組 男子   1-52
1-55頁左端の少年。校門での最初の混乱の際、若原先生の強烈なビンタを浴びたり(1-94)、「とりあえず水をのんでがまんしよう」と前向きで(1-211)、ポケットのキャンディを発見してはしゃいだり明るくひょうきんで(1-245)、「ぼくも高松くんの味方だっ」(2-252)と真っ先に言ったり、怪虫復讐戦でも戦列の先を歩き(3-10)、(単に翔にくっついているだけか?)、見た目はひよわだが正義感もそれなりに有り好感が持てる。他に、3-176など出番とセリフは多い。泥沼の東京湾で、倒れた高松翔を踏越えて逃げることに躊躇し、泥の海に足をとられて死亡(4-146)。結局、これだけ活躍していながら名前も分からないまま死んでゆく点、まさに群像劇としての『漂流教室』の典型的人物。因みに『映像〈かげ〉』では重要な脇役、『偶然を呼ぶ手紙』にも冒頭で1ヶ所だけ出演する。また、『復讐鬼人』の若殿、『女の子あつまれ!』の若殿ちゃんも、眼鏡こそかけていないが、このキャラクターで、同じ役者と認定したい。
〔どど彦〕(仮称) 6年3組 男子   1-54
1-55頁一番前の男の子。この顔は、『まことちゃん』のどど彦に引き継がれる(ちと無理が有る解釈かな)。随所に描かれている。最後まで生き残ったか。
吉田(よしだ) 6年3組 男子   1-54
1-55頁前から二人めの男の子。ペスト事件の時、桃の実がなると高松らに報告に行ったため(3-143)、感染者扱いされ、新しい大臣側の人間にヤリで突きさされ死亡(3-210)。ほか随所に出る。
愛川京子(あいかわ・きょうこ) 6年3組 女子   1-54
吉田くんの隣。給食の様子を見に行き、関谷に人質にとられるが無事生還する。その後は大した役割はないが、随所に見える。洋服もセンスは良い。スズランのリレーの際にも、リレーに参加こそしてないが、校舎直前で倒れた咲子を救いに出るなど、活躍する。最後まで生き残ったと思われる。「京子」という名は1-196に見える。このキャラは『偶然を呼ぶ手紙』のヒロイン・洋子、『洗礼』の敵役・中島さんなどの役でも楳図作品に出演する。
大久保(おおくぼ) 6年3組 男子   1-54
じゃんけんのグーのTシャツを来ている。名前は1-215に見える。給食室に立てこもる関谷との闘いで、畑くんにピストルを誤射され死亡(1-224)。
桜先生 教諭 男   1-63
最初に学校の外が無くなったことに気付いてグラウンドで倒れる(1-63)。荒川先生の子供を抱き上げる(1-111)。校長の現状をみてすっとんきょうに笑う(1-136)など、苛酷な現実を直視できない逃避型人間。たえきれず最初に刃物で首を切り自殺する(1-299)。しかし、それは彼の個人的性格の問題ではなく、若原も関谷も含めて、広く大人の範疇と見るべきである。
山本(やまもと) 6年3組 女子   1-88
1-54頁には見えないが、6年3組のクラスメイト(1-178頁参照)。愛称「ノリちゃん」からのりことか言う名前だろう。クラスみんなで屋上に上がった際、フェンスを乗り越えて(だからノリコかな)落下、死亡(1-88)。
荒川先生 和広(あらかわ) 教諭 男   1-101
最初の校門で、混乱をしずめるため、息子の和広の腕にメガネを突刺す。場面描写はないが、若原先生に殺されたのだろう。
浅井先生(あさい) 教諭 男   1-119
地震の起きる前に「光化学スモッグにおける児童心理の分析」というラジオを聞いていた。名前は、若原先生に「浅井先生は通信方法を考えてください」と言われている場面から(1-145)。桜先生が死ぬ場面にも見える(1-299)。場面描写はないが若原先生に殺されたのだろう。
谷村先生(たにむら) 教諭 女   1-122
心臓発作の持病持ち。ショックで教務室で倒れる場面のみ(1-122)。
教頭先生 教頭   1-125
気絶してて全然事態を把握していない校長と違って、それなりの指導力を発揮しているのだが、若原先生に手で首を絞められ殺される(1-302)。
大塚先生(おおつか) 教諭 男 放送部顧問   1-157
体育館で、初めて教員側からの事態説明をする先生。「見知らぬよその土地にいるらしい」と説明する。他には出番無し。若原先生に殺されたのだろう。
川田たけし 3年生 男子   1-166
川田咲子(咲っぺ)の弟。漂流初日に、腹痛故帰宅すると言って校門外へ出て、そのまま倒れる。若原先生等は「学外に出てはいけない」と主張し見殺しにする。
関谷久作(せきや・きゅうさく) 長吉製パン 38歳男   1-188
詳しいプロフィールが、新聞記事に載っている(2-88)。年齢38歳。「長吉製パン」というパン屋の人。単にパン屋だけでなく、学校指定の給食屋であり、給食用に古米を売りつけようとしていた(2-135)、という如く、パン以外にも手を出しているから、学校給食産業で手広く商売をしているらしい。恐らく、営業&配達兼社長と言ったところか。最後まで生き残ったが、片目片腕の馬内にナイフで刺される。でも、この程度の傷では死んでないと思う。未来の社会では、高松らを受け入れることになると思う。

ファッション的にも、手描きであろう細かいチェックのシャツを着ていて丁寧に描かれている。

実にいやな大人だが、楳図本人は「こういう性格、好きですよ」と言っている。意外というか、なるほど、というべきか。若原先生のイヤさとは、たぶん一線を画すのだろう。楳図は、一連の蛇・蜘蛛モノなどで「ヘビやクモより人間のほうが恐い。人間はヘビのしたたかさとしなやかさを見習うべきだ」などと発言しているが、そのヘビやクモに近いのが関谷。最終的には「おろち」や「猫目小僧」の傍観的関与者の図太さに通じてゆく性格と考えるべきではないか。

山科先生 教諭 男   1-189
食料を独り占めする関谷を説得しようとして、モップで殴られる。6年3組の愛川さんとともに、関谷の人質にされる。それだけの役。
〔給食のおばさんたち〕    1-191
1-191、給食室の場面で、給食婦たちが描かれている。その後、活躍することはない。恐らく、若原先生に殺されたのだろう。
西あゆみ(にし・あゆみ) 5年生 女子   2-7
「日本人離れした美少女」という設定だと思う。小さい頃に転んで脊髄を痛め、そのため足が不自由で、松葉杖をついており、みんなからのけ者ににされていた。その障害を補償する空想癖が昂じて、自然と超能力が身に付いている。長野生まれだが、すぐに両親に死別され、東京のおじに引き取られたという生い立ちで、薄倖な少女である。翔の盲腸手術のおりにも、看護助手をする。

高松翔は、西あゆみを恋愛対象として大切に思っていたのか、母と連絡をとるために必要な道具と思っていただけなのかは、考察の余地がある。が、翔を好きな咲っぺは前者と解して、翔から身を引く。すんなり行けば、いまごろ未来では高松姓となり、苛酷な中にも翔の子供を産んでいるのだろう。(苛酷な未来を自ら切り開いてゆく彼らにとって、彼らがどんな大人になろうとも、浮気や不倫問題でもめてる、などとは想像したくないね。笑い)。

安堂(あんどう) 6年1組 男子   2-11
若原先生の指導で、翔らと車で学外探検に出かけた一人。生徒は5人で6年生各クラスの代表、それに西あゆみが加わる。安堂くんは真っ先に若原先生の餌食となり、顔にビニールを被せられて窒息させられそうになる。その時には、翔らに助けられるが、結局若原の車にハネられ死亡する。
清野(せいの) 6年生 男子   2-11
クラスは不明だが、クラス代表だから2、4、5組のどれか。学外探検者の一人。最初に若原先生に自動車で轢かれ、死亡する(2-19)。
長田(ながた) 6年生 男子   2-11
クラスは不明だが、クラス代表だから2、4、5組のどれか。学外探検者の一人。足が速く(2-26)、若原の車からは逃れたようであるが、帰校途中に怪虫の森を通り、葉っぱを一葉持帰り絶命する(2-147)。
〔ホテルケイヨー4225号室の泊り客〕 国際結婚夫婦   2-78
夫婦。夫は日本語がペラペラだし、日本人だろう。妻は白人系外国人。
辰巳(たつみ) 6年2組 男子   2-119
弱い者にたいして「こっぴどい」ことをしてきた「番長」。「名字に"た"の附く人のせいで未来に漂流し、その人を火焙りにしたら」云々という、低学年に広まった呪術的な噂のまととなり、磔、火焙りにされそうになる。最終的な生死は不明。
八田(はった) 6年1組 男子   2-133
タコの顔をしている。タコの八ちゃん式のネーミング。極度に緊張したこの作品の中で、かなり過激にブチコワシ的ギャグなキャラ。
我猛(がもう) 5年生 男子   2-142
見栄えはしないが、IQ230という天才児。5年生ながら文部大臣。かなり強烈なキャラクターだが、実際にはそれほど出番が多いとは言えない。が、いずれにしても、こういう賢い解説役というのは人気キャラクターになりやすい。そのあたり、主人公の翔とのバランスとして、一つ下の5年生であり、見栄えも悪いのだろう。
赤羽(あかばね) 6年生 男子   2-160
ユウちゃんを人質にとった関谷に脅され、植物を求めて探検にゆく児童のうちの一人。ほかに、翔、大友、池垣、田代が同行する。赤羽くんは、大友を殴って怪虫の餌食にさせ自分は逃げる。その後、女番長の手下に成り下がるが、選挙に負け学校を出る女番長についてゆくことも出来ない。という具合いの、ひ弱さゆえの卑怯者。関谷もそうだが、こういうキャラクタが居るのが、楳図的だといえましょう。その後も生き延びるようだが、最終的な生死は不明。
女番長(お姫さま) 6年生 女子   2-202
不登校で、街で遊びあるいている。小学生なのに化粧もしている。ナワバリは新宿か吉祥寺。手下にトメ子、ハツ子がいる(でかいほうがトメ子)。なぜか、現在(1990年代)の松田聖子に似ており「栄光ある先取り」(SSC『漂流教室』初版1巻袖の作者のことば)である。学校が未来に漂流したのは高松翔のせいだ、と主張するが、その根拠はどこにあるのか。これについて、風間潤の『小説 漂流教室』では、女番長を「高木摩耶(まや)」と命銘し、「た」の附く人人のせいで云々という噂に関して「あたしのせいだって言うのかい?」などと言わせて、合理的解釈を与えている。
大月(おおつき) 6年生 男子   2-268
大臣7人のうちの一人。任所は不明。関谷に未来キノコを試食させられ未来人類になる。未来人類の集る地下街でも登場する(5-25)。
柴田(しばた) 6年生 男子   2-268
大臣7人のうちの一人。建設大臣。名前の初出は3-195。以後、多くの場面に出ている。正義感、責任感にあふれた子供。未来人間に殺される(5-172)。
石田(いしだ) 6年生 男子   2-268
大臣7人のうちの一人。食料大臣であることが、初めてキノコが生えた時の大月くんの会話でわかる。地下道から爆風で吹き飛ばされた際に鼓膜を破られ、その上、大友が倒した鉄板の下敷きになって死亡。名前は死ぬときになって漸く判明する。大臣任命後は出ずっぱりなのだが、あまり重要な役はない。
仲田(なかた) 5年2組 男子   2-270
恐怖逃避の心理作用により怪虫を妄想する。怪虫を消すために、みずから斧で額を打ち破り自決する(3-102)。もともとは、自分の妄想により怪虫が出現したということを否定し続けていたが、西さんが小怪虫に囲まれたのも見て、自決を決心するのである。

なお、いまの学生は「とうとつに怪虫が出てくるあたり、ストーリー的に破天荒すぎるし、オチは『妄想でした』なんて、納得出来ない」と思うようだが、「心理作用が現実を変容させる」という楳図流観念論こそ、彼の真骨頂なのですよ。SFでもP・K・ディックだとか、こういうのを得意にした人もいます。ただし、食い物を欲しがる仲田くんの顔は、みな評判(?)が良いようだ。

My First WIDE版の「登場人物一覧」では「5年3組」とあるが、2組です。

〔ボウズくん〕(仮称) 6年3組 男子   2-286
大友くんと並んでいる絵があり(1-246)、捕われの関谷へ向かって「エンピツけずりでからだじゅうをそいでやれ!!」と言い(1-276)、また怪虫の見張り役として出てくる(2-286、2-293、3-54)。最終的な生死は不明。『女の子あつまれ!』にも出演している。
上村(うえむら) 6年5組   3-61
クラスが5組まであることが分る、貴重なキャラクター。小怪虫に食われ、瞬時に白骨化して死亡。(ただし、BC 1-259にも既に「5組」という言葉は出てくる)
〔小説家志望の子〕 6年生カ 男子   3-116
翔の発した『ただいま』というセリフに感激する(だけの)役。この『ただいま』は当初楳図が考えていた本作の「裏テーマ、裏タイトル」であり(風見潤『漂流教室』角川書店・第2巻/楳図のエッセイ)、それを強調するため(だけの)役。怪虫退治の一員なので、5年生か6年生。
橋本くん(はしもと) 6年1組   2-268
最初のペスト感染者。ペストを媒介したリス(4-18、4-109)に偶然触れてしまったと考えるべきか、あるいはリスの飼い主だったのか(風間潤版『漂流教室』は後者の解釈)。
〔マンガバッジ三兄妹〕    3-152
ペスト保菌者の橋本くんの世話をした、姉一人に弟二人の三兄妹。背の低い子(最後の弟)は胸にマンガバッジをつけている(3-204、3-257)。しかし、初出では背の低い子は居ないし、三人とも半ズボンっぽい(2-152)。ペスト事件のなか、乱闘で殺される。
ミイラ/大木選手(おおき) プロ野球選手   3-227
ミイラとして初出。プロ野球選手で子供の憧れのまとの大打者。ユニフォームには「GIAN」などと見えるから、読売巨人軍がモデルだろう。背番号6だが(4-55、4-67)、左打者だし王貞治あたりがヒントだろう、名前も似ている。右手首にタテに5センチくらいの傷がある(4-25、4-38、4-55)。どんなピンチでも猛烈なファイトによって試合を逆転させる選手で、翔も大ファンなのだという(4-47)。翔の持つ、絶望の中でも常に希望を失わないという態度は、こうした野球選手の活躍などを見ることによっても学習・形成されてきた、と考えるべきである。
〔残忍な新大臣〕 6年生 男子   3-254
我猛くんのセリフ(3-206)で、この新大臣のことが初出。ペストで死ぬ。顔に大きな傷痕があり、残忍性を象徴する。クラスは3組以外。
田村 6年3組 男子   3-255
翔ちゃんが「ぼくのクラスの田村くんだ!!」というセリフがある(3-255)。これは、次頁の新大臣のセリフ「おまえが高松翔のクラスのものだということはわかっているんだっ!!」から、田村=ヤリでつつかれてる子、という事が判る。新大臣が田村、というのは誤解。
〔大友の母親〕    4-9
大学生の息子もいるから、ちゃんと更けている。
〔ユウちゃんの母親〕    4-13
三歳児の母親だから、若奥さん。4-27、4-34にも登場。
〔杉並区の役人のAさん〕 公務員   4-18
テレビニュースで放映された。アメリカ帰りで、飼っていたリスを媒介としてペストが発生する。未来にペストが発生したネタ明しとして重要なキャラクターだが、杉並区と設定したあたり、大和小学校が杉並区の小学校ということなる。その辺の影響を、どの程度勘案してよいのかな。ところで「役人」てのは職業的な差別用語じゃないのかな。
野口(のぐち) 6年生カ 女子   4-154
校門で人垣になり土石流侵入をふせぐ一人。ウデが手首から千切れる(右)。(中央は咲子)。左の女子は、首から千切れる。
小山(こやま) 6年生 女子   4-297
美川さんの親友。
〔未来人類 A〕
(仮称)大月くんか??
   4-324
未来人類は、地球壊滅に際して現れた新型人類。四足歩行で背中に巨大な目を持ち、糸を吐出す等クモのような性質を持つ。初出は4-324で、この時に現れるタイプは顔の部分が毛で覆われている(4-338)。ふつうのタイプ(?)は5-17が初出で、顔の部分の二つの目は退化して皮膚化している。

とくにここで〔A〕と仮に個体を特定してみたが、これは美川さんを呼びに来た、顔に毛があるやつ。5-59で、おやぶんに「連れて来たのはおまえか…?」と尋ねられる。こいつは、テレパシーが使えず、おやぶんらに殺されてしまう。このAを、大月くんだと考える解釈がある(風間潤『漂流教室』や漂流教室マニアックスなど)。が、Aは、美川さんらを「砂の上に、学校とともに突然現れたものたちの一部です」と紹介し、またその四つんばい児童の中には大月くんと思しき人物もいるし、翔らもそう見ている。このA=大月とは考えにくい。しかし、すると「なぜAはテレパシーが使えないのか」よく意味が判らなくもなる。これは、『漂流教室』最大の謎だと思う。

なお、「地球の変貌により、現人類に変るミュータントが発生する」というパターンも、楳図が得意としたもの。そのミュータントは常に異様な形態をしているが、現人類はそれを受け入れざるを得ないのだ、という終末思想が通底している。代表的な作品に『笑い仮面』『半魚人』などがある。

〔爆弾犯人を目撃した児童(二人)〕(仮称) 低学年生   4-353
翔が地震の原因を作ったダイナマイト犯人だと証言する少年。おそらく低学年生だろう。目撃者はもう一人居て、そちらは「富田(とみた)くん」という(4-357)。目撃では、手に何かを持っていて職員室のエンの下に入って行った、といい、ダイナマイトの破片も見付かっている。が、実際には翔が犯人ではない。つまり、結局見間違いなのだが、なぜ見間違えたのかという決着は最後まで付いていない。いずれにしても、物語終盤にあたって、「漂流の原因たるダイナマイト犯人がいる」という推理的興味がここに提出された、という設定である。
〔えい児殺しの母親〕(仮称)    5-32
未来人の視る「滅亡の記録」というフィルムに出て来る新聞記事に見える。
〔地下街の生き残り〕(仮称)    5-85
地下街の生き残り。「管理人室」で生活している。翔らを見てショック死する。地下街にある多量の死体を食料にしているらしい。年齢不祥。
〔第1号〕(だい1ごう) 上級生   5-193
関谷が支配する学校で、特攻隊の如く捨て身戦法で戦う児童。手製のヤリを唯一の武器とする。個人の尊厳は無視され、番号が振られていて、個別性を持たない。関谷は「後ろで見張っている」と口先だけの激励をするが、しかし、彼らはそれを素直に従ってしまう。ある種の戦慄感がある。ここでは、かれらの尊厳を重く見るべく、一人ひとりを別項立てにします。
〔第2号〕(だい2ごう) 上級生   5-194
「第2号」は、結局スカされ、自滅する。
〔第3号〕(だい3ごう) 上級生   5-194
最後、どうなったかまでは描かれない。ともかく、冥福を祈るのみ。
〔第4号〕(だい4ごう) 上級生   5-194
うーむ、彼らの生の個別性を記述しようと思ったのに、特に書くことがないなあ。
〔巨大オニヒトデ〕 未来生物   5-214
焼いても食えない。焼くと、化学薬品のような煙が出る。
ピーコとチーちゃん(チーコ)    5-236
小鳥たち。鳥カゴが開き逃げていった絵をみると、全体では20羽以上いるようであり、こうして個別的な名前が付けられているところを見れば、うちの2匹ということであろう。名前は、たぶん、漂流以前から付けられて、児童から可愛がられていたのであろう。

6-291には「チーコたちがもどってきた!!」というセリフが有る。これは、それぞれ別の鳥ではなく、「チーコ」が本名、「チーちゃん」が愛称と考えておく。

内藤(ないとう) 6年生(高松側)   5-251
内閣制度も崩壊し、高松側と大友側に分裂した後、高松側のナンバー2的な存在。死んだ大友組の児童の持ち物をこっそり取ったりと、必ずしも純粋な正義感を持つわけではない。高松と一緒に大友側の「ブタのまるやき」を偵察に行き、大友くんの投げたヤリによって目をさされ死亡する。
〔高松翔が殺した児童〕 6年生か(大友側)   5-254
高松翔が初めて殺人をした、その相手。ハンカチのようなもので顔を隠しているのは、この時期は鎮静化しつつあったが、学生運動(その内ゲバ)などの風体に擬したものか。
〔盲腸くん〕(仮称) 6年生(高松側)   5-262
「ぼくも盲腸になったことがある!!ひやせばいいんだ」が第一声(たぶん)。盲腸手術に自信の無い柳瀬くんに「でも、きみは医者のムスコだろう!!将来、医者になるって言ってたじゃないか!!」と激励し、手術時には翔の頭を押さえる役目を全うする。ほか、レジャーランド天国の現代の銀座のお菓子コーナーでは鉄パイプを見つけて箱を割ろうとするが失敗(5-116)。同所での白兵戦以後一旦消えるが、後に出てくるから(6-247、6-303)、最後まで生き残ったのである。
杉山恵子(すぎやま・けいこ) 6年生か(高松側)   5-282
翔の盲腸の手術の際、執刀する柳瀬くんを助けて看護婦を全うする。絶望の未来において、自身の生きる道を見つけることで再び希望を持つ。そういうメッセージ性を直接に荷った登場人物。苛酷な未来においても、人間としての人生を全うしてくれるだろう。

彼女は、手術後、こういう。

わたし、ほんとうに看護婦になったような気持ちだったわ! わたし、おとなになったら看護婦になりたいと、いつも思っていたの……でも、こんな所へ来てしまって、もうだめだと思っていたの……でも、そうじゃなかったわ! ほんとうは逆だったのよ! わたしは最後までがんばることに決めたわ!!
かたやスズラン・リレー、かたや看護婦。女の子たち、頑張るねえ!レジャーランド天国でも、柳瀬と並んで見える。
朝子(あさこ) 6年生か(高松側)   5-277
翔の盲腸手術にあたり、咲子は麻酔になるというスズランを大友側にある花壇へ取りにゆく。その栄光あるリレーメンバー全員で4人のうちの一人。このスズランのバトンタッチをする前に、大友側の児童に発見され、相手と差し違え、殺されたと思われる。このすこし前から、咲子の近くにいて、出番もあった。
久美子(くみこ) 6年生か(高松側)   5-292
翔の盲腸手術にあたり、スズランを取りにゆく一人。スズランを根っこから引き抜き、最初にバトンタッチする。最初に、大友側の児童に石斧で殴られた時は、「大丈夫よ」と言うが、その後、再び殴られ、死亡確認の描写こそないが、殺されたと思われる。
マリ子(まりこ) 6年3組(高松側)   1-261,5-292
翔の盲腸手術にあたり、スズランを取りにゆく一人。久美子さんが投げたスズランを空中でキャッチし、大友側児童に追い付かれそうになって、咲子にバトンタッチする。が、大友側児童に殺され、その死亡も確認された。

初出は、1-261で、着てる服は微妙に違うが、「こわいっ!!わたしくらやみがこわいの!!」と泣き叫ぶ女子だと思う。ゆえに、6年3組と同定する。

〔マリリン・モンローのロボット〕 富士大レジャーランド・天国   6-86
楳図はマリリン・モンローが好き。しかしそれにしても、後年これがまた、ほんとにロボット・モンローとして復活するなんて、誰も想像しなかったよ。
〔内藤くんの親友〕 6年生(高松側)   6-159
内藤くんの親友というのだから、6年生。クラスは3組以外だろう。内藤くんには、テストの際にも、こっそり答えをみせてもらったりしていた、といい、内藤くんの死に激怒する。翔の偽りの告白後は、大友と並んで、翔をヤリで突刺そうとする。最後まで生き残ったと思われる。
つづく ../img/p_.gif   
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高橋明彦


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